出版社内容情報
政治犯の炭焼党員に対する貴族の娘ヴァニナの情熱的恋愛を描いた「ヴァニナ・ヴァニニ」,イタリアの名家チェンチ家におこった父殺しの娘ベアトリーチェの悲劇を書いた「チェンチ一族」のほか,スタンダールの名短篇5つを収める.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
刳森伸一
4
スタンダールの短篇小説を5篇集めた作品集。冒頭の表題作は無駄のない物語で、スタンダールのストリーテーラーとしての腕前が率直に楽しめる。次の「チェンチ一族」では、内容とは関係の薄いドン・ジュアン論を打つなどの楽しい。それ以外も納得の物語が並んでいる。2021/05/28
きりぱい
4
「ヴァニナ・ヴァニニ」と「ミーナ・ド・ヴァンゲル」が面白い。片や政治犯に恋する令嬢、片や既婚男に恋する令嬢と、どちらも恋する気持ちが高まり過ぎて血迷った行動に出る。利己的な作戦も、運命だと受け入れられている時はよかったのに、それが仕組まれたものだとわかった時は・・。ヴァニナの男装の機転など面白いのに、いかんせん取り返しがつかな過ぎた。相手にとって致命的であると考えが及ばず、過ちを起こさせてしまう恋心の皮肉。中盤の三編も、悲劇のベアトリーチェが印象に残る「チェンチ一族」など面白いのだけど、説明的過ぎて。2011/11/09
T. Tokunaga
1
正直に白状するが、わたしはこの短編集をすべては読んでいない。なぜなら、「ヴァニナ・ヴァニニ」と「チェンチ一族」があまりに印象的で、そのほかの作品に興味が持てなかったからである。「チェンチ一族」のベアトリーチェと、「ヴァニナ・ヴァニニ」のピエトロは忘れられないキャラクターになりそうだ。2023/04/04
まどの一哉
1
たとえば「チェンチ一族」では先ずスタンダールなりのドン・ジュアン論。その発生がキリスト教以降の産物であることを説いてからおもむろに本編へ入るなど演出も心憎い。また「読者はこのように長い物語に倦かれただろうと思う」という終わり方も素敵だ。これらの歴史小説は歴史その儘に森鴎外が書いたと言われても、また誰か現代作家がよく調べて書いたと言われても、つい本気にしてしまうほどの古さびたところのないキレのある出来栄え。2019/05/14
あにこ
1
かの有名なベアトリーチェ・チェンチの悲話が収められているということで、ずっと読んでみたいと思っていた。ようやく復刊されたので、店頭に並んだその日に買った。どの作品も才気ほとばしる上流階級の夫人がヒロインで、その情熱的で高邁な精神には圧倒される。彼女ら(をめぐる逸話群)に魅了されたスタンダールの気持ちもよく分かる。ミーナとか、やってることは悪女と言われても仕方ないことなんだけど、その「自分への素直さ」には心打たれるものがあって、つい応援したくなるものね。非常にエネルギッシュな作品集であった。2015/03/06
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