出版社内容情報
砲兵士官ラクロ(一七四一‐一八〇三)が七年間駐屯した南仏一小都市での見聞を素材として,大革命前のパリ社交界に渦巻く悪徳と退廃を描いた書簡小説.当時,世人は作中人物が,「実物に似すぎている」ことに眉をひそめつつ,しかも熱狂的にこの小説を愛読したという.フランス心理小説の最高傑作の一つ.
内容説明
背徳漢ヴァルモンとその恋人メルトイユ夫人が狡智をかたむけて仕組んだたくらみは、今や着々と実行に移されていった。清純なセシルもヴァルモンの甘く執拗な誘惑に抗しきれず、ついにその身を彼の胸にゆだねる…。えぐるがごとき鋭い心理分析のゆえに、この書簡体小説はフランス心理小説の最高傑作の一つに数えられている。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
415
この小説は、いわば恋愛至上主義の風土に立脚するのだが、彼らの恋愛と近代以降の恋愛とは同列には考えられないようだ。18世紀の貴族社会における社交界の恋愛は、多分に人生におけるある種必須の装飾であり、それなくしては社交界自体が成り立たないようなものであったのではないだろうか。思えば、幾分かは年長ではあるもののカサノヴァも同時代人であり、彼は時代から顰蹙よりは称賛を勝ち得たのではなかったか。もっとも、その一方ではルソーもまた同時代人であり、小説の遥かな背後にモラルが垣間見えないでもなかったのだ。2019/08/24
遥かなる想い
149
下巻に入っても、メルトゥイユ侯爵夫人の 悪の意思は続く。18世紀末のこの物語、 恋と退廃と悪巧み…暇なフランスの 上流階級の戯れが、純粋なセシルたちを 滅ぼしていく。 全く魅力のない主人公たちが 繰り広げる 恋のお遊びの最後は 落ち着くところに 落ち着いた、心が壊れた 上流階級の恋の お話だった。2018/10/10
lily
83
恋の心理戦なんて結局、好きが上回るほうが負けに決まってるの。どれだけ精神的に余裕がもてるかどうか。ベットの上でもピストン数と精神的余裕は反比例するもの。幸せな気持ちが持続する威力は大きい。2021/06/05
チェ・ブンブン
21
弄ばれている方は大惨事になるまで気がつかない。あまりにセシルが可哀想でしょうがなかった。何たって、ヴァルモンの押しが強すぎなんだもん。その様子を手紙で逐一連絡する。最悪だ。僕はそんな男にならないようにしよう。2014/03/26
Ribes triste
12
巧妙に進むかに見えた計略の崩壊と悲劇。書簡形式で構成されていますが、話が進むにつれ、お互いが手紙で好き放題言い合うばかりで、真意が相手に全く伝わらない絶望感がひろがります。自己顕示欲、心のもろさ、卑怯さが赤裸々に暴き出されます。好みじゃないですが、ぐいぐいと読まされてしまいました。それにしても、筆まめでないと成立しない話です。2019/09/06
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