内容説明
放蕩者の狡猾なたくらみに対抗する男装のヒロイン、二人の下僕も加わって展開する騙しあいの輪舞「贋の侍女」。恋の成就のために変装し、つぎつぎに邪魔者を片づける王女の活躍「愛の勝利」。現代に復活したマリヴォー(一六八八‐一七六三)の異性装劇二作品。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ラウリスタ~
6
男装した女性が男女を問わずたぶらかしていくというストーリーが純粋に面白かったんでしょう。喜劇。あとフランスの召使らしい、主人を馬鹿にしながら仕えている様子が個人的に好き。悲劇ではよくあるテーマを主人公を女性に換え、しかも男装させることでコミカルな場面に変身させている。この時代としてはかなり衝撃的。こういったふざけた作品は数百年たってようやく正当な評価を受けるよう。逆に現代の文化で何が後の評価を受けるのか考えさせられる。そういう意味ではあまり大衆的だと馬鹿にしてもいけない。2010/11/18
きりぱい
4
面白かった。2編とも男装のヒロインの戯曲。「贋の侍女」は、縁談相手を探るのに懲らしめの動機も加わったので、騙しうちもまだ許せる気がするけれど、「愛の勝利」の方は、スパルタの王女が、過去に王位を奪われ遺児となったアジスへの想いを叶えるためだけに、隠遁する哲学者とその妹をあて馬にするのだから結構酷い。そこがまたニヤニヤするところでもあるのだけど、喜劇にしてはちょっと寝覚めが悪い?両方とも、正体がばれても嘘を重ねて別の顔を使い分け、口の軽い従僕たちが騙し合いを込み入らせるのも一興。2012/08/09
壱萬参仟縁
3
1724,32年初出。解説にあるように、格差社会の不条理な感覚は鋭敏だった著者(272頁)。「愛の勝利第2幕」で、哲学者のエルモクラートは、「わたしは、知恵を尊ぶどころか、そのけちな、ずるい模倣を後生大事に抱える、虚栄に満ちた、高慢ちきな男」(217頁)と自己批判、卑下する。わざと、自分を貶めておいて、相手の同情を買うというのは、評者に似たところがあるかもしれない。恋愛の駆け引きはスリルがある。ヴァーチャルでもリアルでも、スリルがあれば人生ドキドキ感があって面白いと思える。人生格差と社会格差を埋める術は?2013/04/28
takeakisky
1
頭のくらくらする、つむじ風のような贋の侍女。シュヴァリエの拙い綱渡り感と、終始よいよいの従者たち。分かりやすいだめ男たち。もっとトリヴランを観ていたくなる。傍白は、やっぱり多め。さらにくらくらくる、愛の勝利。当たるを幸いにと車斬りに籠絡するフォシオン=レオニード王女=アスパジー。愛の凶戦士だな。始めから終わりまでほぼ出づっぱり。金も魅力も愛もばら撒いてみせる。最後は、下にー下にー、ははぁー、といった具合。2025/02/14
tan_keikei
1
結婚相手の真価を見極めるべく男装し、相手の懐にとびこむ令嬢の冒険「贋の侍女」焦がれた相手の心を奪うべく男装した王女が、その障害となる哲学者とその妹を手玉に取り恋の罠をしかける「愛の勝利」 特に「愛の勝利」で理性を重んじる哲学者とその弟子、そして哲学者の妹を誘惑する台詞は官能的で今読んでもゾクゾクします。罠と言葉遊びに満ちた心理劇。楽しめますよ。2013/09/26