出版社内容情報
興の赴くまま人間について語り続けるモンテーニュ(一五三三‐九二)の筆致には,一種いい難いあじわいがあって,われわれの心を引きつける.プルタークに傾倒し『倫理論集』を愛読した彼.自領の館に引退し,古人のひそみに倣って悠々自適の生活を送った彼.読み進むにつれて,そういう彼の人柄が読者の眼前に彷彿するにちがいない.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
roughfractus02
12
著者のessai(試み)は第3巻13章「経験について」で文字から離れるが、文字の外ではまだ継続しているようにも思える。凸凹で曲がりくねった道を歩むような本書の足取りは、ここまで経験(experience)を実験(experiment)にかけるように、足し算的に増す知識を削ぎ落として虚無に自らを晒し、知の限界を身体も含めた不完全さ(「足なえ」)として肯定してきた。著者は、この限界のある知と付き合うには、無知であることを知ること、「知らない」と勇気をもって言い、その身を晒すことの必要を説く。特に死に際しては。2022/05/09
うた
12
再読。最後にあたる“経験について”の考察が彼のエセーの総まとめになっており、最も面白い。例えば「我々は注釈しあうことばかりしている。(中略)注釈されたことで難しくならなかった本はないだろう」などは、単純素朴を旨とする彼らしい箴言だ。締めの「もっとも美しい生活とは、私の考えるところでは、普通の、人間らしい模範に合った、秩序ある、しかし奇跡も異常もない生活である」も、老齢を迎えたモンテーニュの境地を物語るに十分な言葉だ。2017/12/31
ソングライン
9
びっこについての章では、最も遠い目撃者が最も近い目撃者よりも消息に通じ、最後に知ったものが最初に知ったものよりも強く信じると、奇跡の危うさを説きます。エセーにはギリシア・ローマの古典に描かれた思想が、度々登場しますが、唯の紹介で終わるのではなく、著者の道徳観、人生論を説くための引用として使われます。作者がこれから成長していく若者に有意義に生きるための方法を語るように書かれたエセーは、分かりやすく、読みやすく、そして面白い書でした。2018/03/10
Fumoh
5
エセー最終巻を読みました。総括するならば、とても良い本であったと思います。ただモンテーニュの人となりや思想を知るならば、最初の一巻を読むだけで十分だと感じました。他の巻もそれなりに読み応えがありますが、初期と比べると言動に矛盾が増えたり、自画自賛が増えてきたりと、蛇足的な部分も多かったです。また話題や論理が重複することがとても多く、書かれた文量の割には、内容はたいして増えていない。ですからわたしはたびたび「喋りすぎ」だと思いました。自分でも不確定なことを喋って「言い過ぎたかな」と思うと言い訳を挟んだり、2025/02/02
dexter4620
3
エセー最終巻。人生の終極に向けて書いているのであれば、彼にとって満足のいく生涯であったのだろう。自分の弱みを披瀝しつつも、満足感を感じる事ができる。「老年は控えめに、最も美しい生活とは、模範にあった秩序ある生活である」と論じている点は今後の生活の参考としたい。2025/02/26