出版社内容情報
事物や歴史の中に眠り込んでいた夢の巨大な力を解放すること--それがベンヤミンのパサージュ・プロジェクトだった。「文学史、ユゴー」「無為」などの断章や
内容説明
事物や歴史の中に眠り込んでいた夢の巨大な力を解放すること―それがベンヤミンのパサージュ・プロジェクトだった。「文学史、ユゴー」「無為」などの断章を収録。『パサージュ論』に関連する書簡、引用文献一覧、人名総索引を付す。全五冊完結。
目次
b ドーミエ
d 文学史、ユゴー
g 株式市場、経済史
i 複製技術、リトグラフ
k コミューン
l セーヌ河、最古のパリ
m 無為
p 人間学的唯物論、宗派の歴史
r 理工科学校
初期の草稿 土星の輪あるいは鉄骨建築
『パサージュ論』に関連する書簡
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬弐仟縁
50
図書館新刊棚。社会主義はふたつの羽をもつ、学生と労働者である(ピエール・デュポン『学生の歌』パリ、1849年、31頁)。本を読む人間が増えてゆくということは、[新約聖書で]パンも増えたのと同じことなのだ(35頁)。金持ちの贅沢を真似るなと貧しい人々に言っても、貧しい階級がより幸せになるわけではない(バルザック『文芸批評』44頁~)。一冊の本が、まさに一個のパンのように作られ、パンのように売られる、作者と消費者のあいだには、[版元を兼ねた]書店主以外に介入するものがないようにする(同バルザック51頁)。2021/12/11
ころこ
41
「無為」という項目がある。この読書には主張が無いとして、そのことは果たして「無為」と言い得るのだろうか。「無為という条件の下では孤独は重要な意味をもつ。どんなに些細もしくは貧相な事件であっても、そこから潜在的に体験を解き放ちうるのは、孤独だからである。」哲学は現実の意味や効用を計ることから一旦距離を置き、それ自身を問い直すことでかえって意味が明確化される。ポテンシャルとしてではなく、有限化によって明確になるのかもしれない。有限化とは人生のことだったりして、その時にここに「無為」の項目があったことに気付く。2023/08/12
かふ
25
ベンヤミンの引用集だからまとめようがないのだが、昨日横浜みなとみらいへ映画を見に行く途中にベンヤミンの『パサージュ論』が具現化しているのを見た。そして一句「たけのこやパサージュのシンウルトラマン」という句を作った(写真はつぶやきで)。「シン・ウルトラマン」が『パサージュ論』に相応しい。かつてのメシア的光の勇者だったものが、破壊と構築の資本主義社会の中の幻想(ファンタスマゴリー)の象徴として、夢から目覚めぬ五月の余韻の中で突然、装い新たに現れた。それはガラスドームに守られた虚像にしか過ぎない。 2022/05/06
ターさん
1
遂に読破した。「パリ国立図書館が私のもっとも望ましい仕事場である」ベンヤミンは「一瞬ひらめく形象」が、「次の瞬間にはもう救えないものとして失われる形象」と知りつつ蒐集したのか。膨大な量の断片は、確実に何かの中心を迫っていく。「無為に過ごす者が神に酷似している」[m4,6]そんな「孤独」で「無為」な「遊歩者」が『パサージュ論』を書き残した。ランボーについて「彼が沈黙してしまったのは明らかに、真の聴衆が存在しないためだった」[k1a,2]ベンヤミンが取り上げたのは、ランボーでなくボードレールだった理由なのか。2022/09/05