出版社内容情報
アイヒェンドルフ(1788‐1857)の代表作で,ドイツ・ロマン主義文学の白眉ともいうべき佳品.その美しくまとまった巧みな構想とほがらかな抒情的気分とによって,読者は,自由に憧れ旅を愛するこの愉快な放浪児とともに自分もまた1梃のヴァイオリンに生涯を託して神の広い世界へさまよい出で,やがてほほえみかけてくる幸運を待ちながら春の陽に心の窓を開く思いを抱くであろう.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ムーミン2号
6
親父にお前は農場では働かないからと追い出された青年が、ウィーンへ移住し、そこで職を得たはいいが、しばらくして働いている屋敷の令嬢に恋したものの、彼女が既に結婚していると誤解してイタリアに旅し、実は結婚なんかしてなくて、彼女も青年を思っていて・・・という何のこともない、ちょっとした恋愛ものの、放浪もののドタバタ喜劇。10分の9まではそうなのだが、終章でどんでん返しとまでは言わぬものの、周到に作られた物語であることもわかるようなことになっている。物語は最後まで読まないと、分からない。2019/11/21
悠
5
ヴァイオリンの弾き語りが、見しらぬ土地にとびこむパスポート。放浪に生きる若者の瑞々しい感性がほとばしるアイヒェンドルフの代表作は、心情を託して歌われる美しい詩句が折々にはさまれ、ただでさえ叙情ゆたかな地の文に可憐な花をそえている。和歌を織りこんだ日本の物語文学を髣髴させる相乗効果は、美事な文語訳も手伝ってきわめて格調が高く、ドイツ・ロマン派文学の精華とされるのもむべなるかな。伏線に秘められたニュアンスが堪能できる再読の味わいは格別で、放浪への憧憬と叙情性を同じくするヘッセが特に愛読した訳もわかる気がする。2017/02/26
散歩中
3
作者はドイツの詩人で、若者の旅の短い小説です。あらすじは素朴で、自然描写がたいへん美しいです。途中話が分からなくなりましたが、構成で工夫があります。19世紀ドイツのロマンチックな時代で遊んだ気分です。2016/05/27
putisiyante
2
人生讃歌の作品と思う。内容は、最初は、要領を得ず、結末近くに、明確になると言う筋書きで、この頃の作品には珍しい展開だと思う。詩人であり、絵画的と言うより、音楽的。しかし、花火のシーンは、ドイツと言うより日本的。夜の花火でなく、しかも昼間の花火。運動会の花火かな?を、想像した。2017/03/26
AR読書記録
2
なんだこりゃ(悪い意味で)。見た目と音楽以外に取り柄のない頭空っぽの若造が、直情のままにばっくれ突っ走り騒ぎまくってたら、いつの間にか麗しい令嬢と大団円。これがドイツロマン派の真髄なのん...? ほんとに...?2015/05/14