出版社内容情報
主人公ティルが放浪者・道化師あるいはもぐりの職人となって教皇・国王から親方連までさまざまな身分の者たちを欺きからかい,その愚かさを暴いて哄笑をまきおこす.五百年余も読みつがれてきたこの作品はいまも諷刺の力を失っていない.中世ドイツ語原典の翻訳に気鋭の社会史家ならではの詳注と解説を加えた.図版多数.
内容説明
主人公ティルが放浪者・道化師あるいはもぐりの職人となって教皇・国王から親方連までさまざまな身分の者たちを欺きからかい、その愚かさを暴いて哄笑をまきおこす。500年余も読みつがれてきたこの作品はいまも諷刺の力を失っていない。中世ドイツ語原典の翻訳に気鋭の社会史家ならではの詳注を加えた。図版多数。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
TSUBASA
23
ドイツで500年以上読み継がれて来た作品。悪たれティル・オイレンシュピーゲルが傲慢な聖職者、職人をこき使う親方、業突く張りな宿主たちをからかってはドイツ各地を遍歴する。どんな仕事にでもありついては、いたずら好きの虫が騒いで権威をコケにする。それでいて持って回った言い方を論って「言われたことをしただけなんだけどなぁ」というあたり、民衆に人気が出るのもわかる。文字通りなクソったれではあるが実にパンクな男であった。本編の愉快さもさることながら、中世ドイツ民俗学の第一人者阿部謹也さんの解説も本編同等の面白さ。2018/12/26
クナコ
11
初読。同名クラシック曲の原作と聞いて。500年ほど前のドイツのいたずら者の滑稽話集。主人公ティルの行為はどれもかなり低俗で、現代的な感性でもって笑えるものではなかった。しかし本作が当時の民衆に回し読みされ、現代に至るまで版を重ね愛されてきたという事実は興味深い。当時の民衆や権威者を愚弄してまわるティルは、当時の下層階級や流れ者たちが、本人はその後を恐れてやりたがらないが誰かがやってくれたら胸が空く、そんなことができるダークヒーロー的な人気を誇っていたのだろう。2025/01/28
Christena
9
有名な物語だけど読んだことがある人は少ないのでは?オイレンシュピーゲルの他愛ないイタズラが楽しい。しかし、その裏に隠された風刺や言葉遊びを知ると、もっと深く味わえると思う。巻末の解説を先に読むことをおすすめします。低地ドイツ語からドイツ標準語に、そして日本語に翻訳されて、言葉遊びの部分は解説を見ないと分からないけど、中世の雰囲気ぐある挿絵をみながら、愉快なイタズラを想像するだけでも楽しいかも。ちなみに、結末はR.シュトラウスの交響詩とは違ってました。2014/08/01
Masako33
4
2024年の第一冊。呆れるほど破茶滅茶でお下劣ではあったが、読み進めるうちに、同じような悪戯を繰り返すティルに愛着が湧いてきて、ティルの最期にはしんみりした(しかし死後にもオチがあって笑えた)。北ドイツの小さな街メルンにはティルの墓碑と言われる石があるらしい。ティルは、明らかに社会のはみ出し者であったのに、時の権力者がみんな忘れ去られた現代まで、民衆の心に鮮明に生き残って愛されている。その事実が痛快だ。2024/01/03
刳森伸一
4
面白かったです。オゲレツだけど、終盤の死に瀕してまでいたずらを続けるオイレンシュピーゲルには感動すら覚えます。2012/07/16