出版社内容情報
ドロステ=ヒュルスホフ(1797‐1848)はドイツ最大の女流作家である.これは彼女の唯一の完成された作品で,ひとりの作男が,ある時ユダヤ人を殺して遁走するが,やがて海賊に捕えられて奴隷となり,17年間酷使されたのち帰郷,かつてユダヤ人を殺したブナの木の下で首をくくって死んでゆく.作者の筆は恐ろしく荒削りで写実主義に終始し,推理小説としても無類である.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
feodor
7
ウェストファリア地方の農民の生涯の明暗みたいなものを描いた中で、ユダヤ人の殺害事件とか、森林の密伐とかを取り入れた小説。訳文のせいなのか、それともこのクライスト調のロマン的ドイツ小説の特質なのか、何かクライストの岩波文庫版の中で描かれているのと似た色彩の話に読めた2015/02/20
きりぱい
2
ユダヤ人のアーロンが殺され、ユダヤ人の有力者たちが、その根元が現場であろうブナの木を残して一帯の木を伐って買い取ったといういわくのユダヤ人のブナの木。実はその前にも青シャツ隊と呼ばれる密伐者たちを見回る山林官が殺され、その両方で疑いを受けたのが母と暮らすフリードリヒ。迷宮入りになる事件、木にきざまれた文字・・とミステリー張りの展開になるのだけど、どうも窮屈な読み心地。領主の印象だけはまだよかったのだけど、全体的に殺伐とした感じで、こちらになんらかの感情を浮かばせる間もなく終わってしまった。2011/08/06
meirokun
1
一種の推理小説の要素も含んだ古典。ブナの木に書かれたヘブライ語がキーワード。罪のない者が罪を犯したものに代わり人生の大半を苦しんで過ごす…実はその行為に意味はない、みたいな。2010/08/15