出版社内容情報
ヴァーグナーの人と作品を語りつつ,マン(一八七五―一九五五)が自らの芸術観を披瀝した講演(一九三三).この講演は,ヴァーグナーをドイツ民族音楽の理想として利用したナチスを厳しく批判したことで,彼の亡命生活への一因にもなった.ヴァーグナーを通してみた出色のドイツ論.「リヒァルト・ヴァーグナーと『ニーベルングの指輪』」を併収.
内容説明
ヴァーグナーの人と作品を語りつつ、マンが自らの芸術観を披瀝した講演(1933)。この講演は、ヴァーグナーをドイツ民族音楽の理想として利用したナチスを厳しく批判したことで、彼の亡命生活への一因にもなった。ヴァーグナーを通してみた出色のドイツ論。「リヒァルト・ヴァーグナーと『ニーベルングの指環』」を併収。
目次
リヒァルト・ヴァーグナーの苦悩と偉大(一九三三年)
リヒァルト・ヴァーグナーと『ニーベルングの指輪』(一九三七年)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ラウリスタ~
14
講演集。そもそもワーグナー全然聞いたことないしなあ、何がすごいのか分からんからなあと思いながら読む。講演自体はへーと思って読み終わったが、この講演が行われた時期が意外にもなかなかなもんだった。1933年と1937年。33年、ヨーロッパ各地を講演旅行していたマンは滞在先のスイスで、自分がもはやドイツには戻れない状態になっていることに気が付く。ほんの数ヶ月でドイツは大きな変貌を遂げてしまっていた。ワーグナーを語る際には、そのワーグナーを利用しているナチスを意識せずにはいられない。そう思ってちょっと読み返すと…2013/11/15
またの名
8
「ヤバい作品を完成させてしまった…。ちゃんと上演されたら、聴衆は気が狂うに違いありません」と手紙に書いた音楽家を、ドイツ文学を代表する作家トーマス・マンが熱く説明。ショーペンハウアーに感化されフロイトを先取りしボードレールやトルストイと共鳴する芸術志向及び政治的な革命精神が同居する人物を偉大なドイツ文化として讃えた講演はしかし、台頭する鉤十字的民族主義の熱狂による取り込みに釘を刺したことで権力者とその支持者の猛抗議を受け、マンは母国へ戻れなくなる。苦悩して狂乱の美を産み出した偉大さがマンに別の苦悩を課す。2020/01/23
Happy Like a Honeybee
8
芸術の意思とは模倣したい衝動の充足以外の何物でもない(ワーグナー) ニーチェ、ワーグナーは心理学神話音楽の複合体とトーマスマンは力説する。 ヒトラー率いるナチスが暗躍し、差し迫る緊張感が講演から伝わる。 神聖ローマ帝国は消え失せても、ドイツ芸術は現代でも残る2016/01/11
叛逆のくりぃむ
5
著者のワーグナーへのやみがたい熱情を感じると共に、「ワグネリズムは病氣である」といふ言葉を再認識させられる。2014/04/06
ブルーツ・リー
4
ワーグナーの音楽は、「困難を乗り越え、しかし力強く生きるのだあああ!!」というベートーヴェンの音楽の延長線上にあると思うのだが、ワーグナー自身「神経症」(今で言えばうつ病であるかも知れない)のため、2時間仕事をしたら、2時間休まないといけないような時期すらあったとの事。 そんな状況で、あれだけの音楽やオペラを残したというのは大変な事。 特に、その思想がかなり厳しいものであるから、それを人生の中で実践している所が、芸術家としての徹底を感じ、本物の芸術家。という印象を持った。 自分も、共感するところ大である。2023/02/21