出版社内容情報
死んだ父の緑色の服を仕立直して着ている少年「緑のハインリヒ」は,自分の画才を堅く信じ故郷と母を捨てて修業に出る.見知らぬ都会での数々の経験を通じ,人間の完成へ一歩一歩近づいてゆくハインリヒの姿は,そのまま若き日の作者自身の姿でもあった.スイスのゲーテといわれたケラーの自伝的長編小説.一八七九―八○年.
感想・レビュー
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あっきー
16
⭐3 戦前に日本人画家がパリに遊学したように心機一転ドイツの首府で一人、絵の勉強をするが岡本太郎みたいな天才ではないので画風の確立に煩悶する、文面では才能が有るのかどうかもはっきりしないし頑張ってはいるのだが容易には芽が出ない、そしてこの手の自伝的小説にはお決まりの決闘騒ぎだ…2024/03/04
Nemorální lid
2
1巻・2巻では中心的な存在であった人物との別れ、画家を志す主人公の歩みの道程、嘗ての友との決闘未遂までを描く3巻は、教養小説としての折り返し地点、クライマックスの峠に差し掛かろうとしている事を如実に示唆している。 人は立場を二転三転する事も容易く、信仰と無信仰の狭間で苦しむハインリヒの瑞々しい姿は、読んでいて此方まで苦しさが伝わってくる勢いだ。「今日の明けがたには私は無神論者の胸にとがった剣を擬したというのに、夜となった今はまたこれらの信仰家の上に嘲笑を浴びせたのだ。」(p.301) 最終巻も期待したい。2018/02/13