岩波文庫
聖ユルゲンにて・後見人カルステン 他一篇

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  • サイズ 文庫判/ページ数 328p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784003242476
  • NDC分類 943
  • Cコード C0197

出版社内容情報

抒情的な短篇「みずうみ」で知られるシュトルム(1817-1888)だが、後期に至るにつれてその作品は次第に叙事的・写実的となり、現実を直視する眼差しを強めていった。悲恋の物語「聖ユルゲンにて」、父と息子の問題を扱った「ハンス・キルヒとハインツ・キルヒ」など、ままならない人生に葛藤する人間の姿を描く3篇を収録。

内容説明

抒情的な短篇「みずうみ」で知られるシュトルム(1817‐1888)だが、後期に至るにつれてその作品は次第に叙事的・写実的となり、現実を直視する眼差しを強めていった。悲恋の物語「聖ユルゲンにて」、父と息子の問題を扱った「ハンス・キルヒとハインツ・キルヒ」など、ままならない人生に葛藤する人間の姿を描いた3篇。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

aika

49
ふとしたときに、手にとりたくなります。『聖ユルゲンにて』のページをひらくと、叙情的な美しさと切なさに、いつも心が包まれます。若く純真なアグネスとハルレを引き裂く哀しい運命。それでも、ふたりは現実の生活問題に直面しながらも、互いのことを心に大切に秘めつづけ、思いつづける。言葉では表すことのできない、大切な何かを、この作品を読み返すたびに思い出させてくれます。燕のさえずりの中でじんと広がる、あまりにも儚く、切なく、美しい虚しさが、心から愛しく思えます。2017/06/11

aika

44
菫色の眼をした優しく美しい少女のことを思い続けながらも故郷に戻れず、職人として別の道を生きたハルレ。唆されて破産した哀れな父親を支えながら少年のことをそっと待ち続けたアグネス。『聖ユルゲンにて』の、今はその姿も無くなってしまった教会の塔で、燕のさえずりが包む二人の別れのあまりの切なさは、幾度読んでも色褪せることを知りません。厳格な父親と放蕩息子の哀しい宿命を描いた『後見人カルステン』と『ハンス・キルヒとハインツ・キルヒ』。学生の頃に読んだ時よりも父親たちの苦悩により自分を近づけて読めたような気がします。2021/10/27

aika

41
秋がくると、陽の傾いた学生寮の暗がりの部屋で『聖ユルゲン養老院』を初めて読んだときの感動が思い出されます。父親を襲った不幸な出来事により、愛する人を50年間待ったアグネス。異郷の地で職人として貧窮に耐え続けたハルレ。燕が歌声で包む神聖な別れに、もの思いは尽きません。そして父と子という提示部を繰り返すソナタのような2篇。父の思いを解ることができない息子の哀れみと、もう二度と会えない息子に無償の愛を注ぎ続ける老いた父の憐れみが、愁いと伴に胸に募ります。いつの日か、作家が愛した寂しいフーズムを旅してみたいです。2022/10/12

aika

35
70ページ足らずの短編ですが、いつ、何度読んでも決して色褪せることない、『聖ユルゲンにて』は私にとって、永遠の作品です。耐え難いほどの不幸な境遇を一身に背負いながらも、ひたむきに生きながらハルレを待ち続けるアグネス。故郷を離れ去るをえなくなり、アグネスの幸福を犠牲にしたことに苛まれながらも、片時も彼女を忘れず、想い続けたハルレ。不幸が彼らの距離を引き裂いても、通いあった心と心までは壊すことはできない、そう思えます。結末はあまりにも切なく哀しいものですが、儚い美しさが一層際立ちます。そこに幸せすら感じます。2016/11/20

aika

15
シュトルムの作品と出逢ったのはちょうど去年の今頃、秋の日曜の夕暮れに学生寮の自室でひとり涙しながら読んだのを思い出しながら再読しました。私が19年間生きてきて、きっと一番好きな作品が『聖ユルゲン養老院』です。本当はシュトルム全集の柴田さんの訳が一番好きなのですが、とりあえず手元にある岩波版を。世界には、この世の中には、こんなに美しくて、哀しい物語があるのか。いつ読んでも胸に込み上げてくる哀切があり、清廉さがあり、強さがある。一生涯読みつづけ、大切な人と分かち合い、語り継いでいきたい作品です。2014/10/03

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