出版社内容情報
『みずうみ』の作者シュトルムが青春時代に書いた短編,『大学時代』『広場のほとり』『おもかげ』『一ひらの緑の葉』『アンゲーリカ』の他,『レナ・ヴィース』を収める.いずれも抒情的ロマンティックな気分にあふれ,ほのかな哀愁と悲しき諦念とに満ちた作品で作者の誠実さと清純性を遺憾なく発揮したドイツ文学珠玉の好篇である.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
aika
8
久しぶりのシュトルム作品。昨年の秋にシュトルムと出会い、涙し、私の中の何かを変えてくれました。新しい作品とはそれ以来。読んでいると、美しくも切ない世界観が頭の中に広がってきて、シュトルムらしさ満載の短編集です。収録されている『レナ・ヴィーナス』は、どこか幼少期を思い出させるようなノスタルジックで心にじんわりと切なさが残りました。表題作『大学時代』は、当時のドイツの慣習が背景として色濃く、何と言ってもローレという女性のラストの喪失感には言い難いものがあります。胸に憂愁が残る作品。秋の夜長にぴったりです。2014/09/08
きりぱい
7
透明感があって叙情性の高かった『みずうみ』に比べると、通念は同じながら、淡い郷愁というより湿っぽい喪失感が漂う。「レナ・ヴィース」がよかった。2010/03/25
ダイキ
5
「シュトルムの文学の範囲は狭いけれども、この「北方的な黄金の誠実さと思考とをもつた作家」の内面的な真実さと純粋さとに貫かれてゐることによつて、「ドイツの世界に生じた静かにして聖なるものの一つ」であり、それゆゑにこそ時代を超えて、いつの世の人の心にも訴へるのである。」(解説/關泰祐)2015/12/17
すぎやん
4
豊かに描写される北ドイツの風景は、澄みわたった空気のなかに美しく浮かび上がる。湖のほとり、灌木のしげみ、町の端から広がる樹林、よく見知った家の門や庭、海の見える丘にたたずむ平屋の建物。そこで紡がれるのは、美しいがために愛おしく、愛おしいがために美しい者との思い出の物語。心に染み入ってくる清らかな心の様は、きれいに濾された世界の賜物であり、終いには、失われることによって永遠の純潔を確かなものとする/どれもすてきな物語ですが、「学生時代」と「アンゲーリカ」はとくに大好き。「みずうみ」よりも心に響きました。2016/11/24
Aleixo
4
「アンゲーリカ」の空虚な(急に何かをポッカリと失ってしまったような)感じのする終わり方がよかった。きっとこんなふうに気持ちが冷めてしまうんだろうなぁ、と思った。『みずうみ』は未読なので、いつか読みたい。C+2014/05/25