出版社内容情報
領主の不正により飼い馬と妻を失った馬商人が、正義の回復を求め帝国をも巻き込む戦いを起こす「ミヒャエル・コールハース」など、日常の崩壊とそこで露わになる人間の本性が悲劇的運命へとなだれ込む三作品を収録。カフカをはじめ多くの作家を魅了したクライストの、言葉と世界の多層性を包摂する文体に挑んだ意欲的新訳。
内容説明
領主の不正により飼い馬と妻を失った馬商人が、正義の回復を求め帝国をも巻き込む戦いを起こす「ミヒャエル・コールハース」など、日常の崩壊とそこで露わになる人間の本性が悲劇的運命へとなだれ込む三作品を収録。カフカをはじめ多くの作家を魅了したクライストの、言葉と世界の多層性を包摂する文体に挑んだ意欲的新訳。
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本屋のカガヤの本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
90
この作家のクライストの作品は学生時代に「こわれ甕」を内容は忘れていますが、読んだことをおぼろげながら覚えていました。またわたしが愛読している多和田葉子さんが「クライスト賞」を受賞したことでもなじみがありました。表題作というのは、当時の領主のやり方を批判していて、この主人公のやり方のは問題があるものの当然であるといいたいのでしょう。カフカの愛読書でもあったようです。「審判」はその影響を受けているのでしょうね?2024/03/30
syaori
78
『ミヒャエル・コールハース』が面白かったです。16世紀中葉のドイツを舞台に、ユンカー(地主貴族)の無体に訴訟を起こしたコールハースの半生が描かれます。訴状を権力により潰され、法の庇護を拒まれたことから暴徒となり、そこから訴状を領邦君主へ上げることを得たものの、大赦の約束を反故にされと、何度も「踏みにじられ」た彼が最後に「敵の踵に」致命傷与え破滅するまでが、見通しの悪い森の中を駆けるように進んでゆき息つく暇もありません。物語は世の不条理や腐敗を露わにしながら神秘やロマンを湛えてもいて大変惹き込まれました。2024/07/04
まると
27
ずっと読みたいと思っていたクライスト。3編ともに期待通り、名作といえる素晴らしい小説だった。共通しているのは、純真な心を持つ個人が、権力や社会に翻弄されながらも自らの意志で動き、最後は衝撃の結末を迎えるといったところか。段落が極端に少なく、語り言葉が地の文にだらだらと吸い付いたような独特の文体だが、慣れるとこれはこれで無駄のない洗練された文章と感じなくもない。馴染みのない近世欧州を舞台とした物語なのに、スリリングな情景が頭に浮かんできた。文章は突き詰めるとこういう文体になっていくのかもしれないと感嘆した。2024/07/07
ピンガペンギン
25
クライストはフランクフルト・アンデアオーダー生まれ。「チリの地震」1810年作。17世紀に実際にあった地震を背景にカントらの神学上の議論が反映されているとある。地震のおかげで処刑を免れた主人公たちのその後は?臨場感あふれる描写に魅了された。「サント・ドミンゴでの婚約」はハイチ革命を背景にしていて、黒人リーダーらの実名が登場する生々しい作品だった。二作とも森鷗外が昔、翻訳している。「悪因縁」という題を鷗外が付けたように、極限状況で愛し合った男女の悲劇で、ほぼ白人視点の話、台詞だ。2024/03/05
春ドーナツ
14
表紙の梗概によると、「言葉と世界の多層性を包摂する文体に挑んだ意欲的新訳」とあって、訳者による解説の冒頭もクライストの文体の特徴について結構紙幅をさいている。個人的にとても大変でした。森鴎外の訳で読んだときは、そういうこと感じなかった。こだわりの文体と相対する読者。難しい問題ですね。「ミヒャエル・コールハース」。中世の終わりから近代のあけぼの、あたりのドイツ事情に精通していないと、なかなか厳しいものがあるので、巻末の充実した作品解説を先に紐解くことを強く推奨したい。注釈も、解説の後に読んだほうが良いと思う2024/04/26
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