出版社内容情報
名実ともにドイツを代表する偉大な劇作家,シラー(1759-1805).30年戦争を背景に,ギリシャ悲劇とシェイクスピア劇の手法を融合せんとくわだてた,シラー渾身の,雄大なスケールをほこる歴史悲劇.新訳.
内容説明
名実ともにドイツを代表する偉大な劇作家、シラー(一七五九‐一八〇五)。三十年戦争を背景に、運命劇としてのギリシャ悲劇と性格劇としてのシェイクスピア劇の手法を融合発展せんとくわだてた、シラー渾身の、雄大なスケールをほこる傑作歴史悲劇。新訳。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
NAO
46
30年戦争で活躍した傭兵隊長ヴァレンシュタインを主人公とする歴史悲劇。「常勝将軍」と自軍の兵たちに皇帝よりも慕われたヴァレンシュタインの磊落さは、政治に関わっていない傭兵隊長だからこその気安さによるものだったが、政治を分かっていなかったために、簡単に皇帝側の策にはまっていく。味方の将軍たちが焦る中、ただ一人事態を把握できないまま、日和見的な言動を繰り返しているヴァレンシュタイン。彼の愚かしいばかりの言動は、すでに破滅が間近に迫っているという緊迫感と驚くほどにずれていて、そこに彼の悲劇性が強調されている。2016/02/03
壱萬参仟縁
9
1798-99年初出。歴史悲劇。第一の狙撃兵の台詞で「下々を苛めることで有名だったあのスウェーデンのグスタフ王のときは、そりゃひどい苛斂誅求(かれんちゅうきゅう=重税取り立て 広辞苑)だったぜ」(37頁)。格差助長の消費増税にTPPが控え、円安で物価高か。アベノミクスも原発作業員にもボーナスを出してほしいが。イロ元帥は、「幸運の意となんぞというもの、人生の たった一つ(傍点) の瞬間に凝縮されて重大な結果という結び目を作ってくれる幸運の糸なんてものは、個々別々に、ばらばら」(139頁)。ボーナス増も一部。2013/03/14
月音
5
1634年、ヨーロッパ諸国が参戦した三十年戦争のさなか、神聖ローマ帝国の軍で権勢をふるった司令官ヴァレンシュタインが仲間に裏切られ、暗殺されるまでの三日間を描く戯曲。『メアリー・ステュアート』といい、最後の三日間好きだな、シラー…。物語の構成、人物設定、セリフ回し等、シェイクスピアへのリスペクトが明らかでニヤニヤしてしまう。歴史的背景・人間関係がちんぷんかんなうえ、主人公がなかなか登場せず冗長で退屈したが、第二部から物語が動き、グッと引き込まれる。⇒続2024/09/07
Fumoh
3
三十年戦争の英雄の一人、ヴァレンシュタイン公にまつわる政治劇です。当時の空気を再現しつつ、歴史書のように詳細な内容であり、またドイツ古典主義らしい質実剛健さと美麗さを兼ね備えた、壮麗で圧巻な書。いま読むと遺物を見るような感じになってしまいますが、ヨーロッパ近代史が好きな方なら、三十年戦争はドイツ戦国時代のような感じなので、ロマンを感じられるかもしれません。シラーの美しい文体も、時々ハッとさせられるものがあります。2024/01/12
tieckP(ティークP)
3
シラーは性質は古典主義的ではないけれど、古典主義にいたって遂に傑作をものすことができたのだな、と思った。激情型の人間だけど、作品に怒りが表れすぎてどぎつくなるのが欠点で、それが『ヴァレンシュタイン』では形式の陰からのぞく程度の情熱に抑えられたことでバランスを得ている。結果としてシェイクスピアと古典を足して二で割ったような品格になった。ただ、シラーは旧世代・権力を憎みながらも、それを倒すよりは負ける物語が多くて、少年時代の抑圧を感じさせられてしまう。ひょっとするとルソーに一番近いのかもしれない。2013/11/17