出版社内容情報
封建領主の圧制に堪えかねたスイスの民衆は,盟約を結んで立ち,スイスの独立を図ろうと企てた.ヴィルヘルム・テルこそは彼らの行動の中心であり,民衆の尊敬すべき英雄であった.この劇のクライマックス「テルのリンゴのまと」の話は全世界に知られている.群衆登場の舞台処理の巧妙さを謳われるシラー最高の傑作.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
S.Mori
15
ドイツの文豪シラーの名作の一つです。領主の圧政に耐えかねたスイスの農民たちが反乱を起こします。その中心になるのは有名な英雄ヴィルヘルム・テルです。テンポの良い物語で、プロットも巧みなのであっという前に読めました。スイスの情景を鮮やかに浮かび上がらせる登場人物たちの詩的な台詞が素晴らしいです。自分の子供の頭の上に載せられた林檎をテルが弓矢でいる場面には、息を飲むような迫力を感じました。この劇は結末が素晴らしい気がします。ここで、敵との和解と許しが描かれます。テルの度量の大きさは英雄にふさわしいものです。2019/08/22
刳森伸一
6
スイスの英雄ヴィルヘルム・テル(ウィリアム・テル)を主人公にしたシラーの戯曲だが、テル個人の物語ではなく、スイスの独立と自由を懸けて戦う市民を中心に据えた群像劇。自由を懸けて戦うというテーマは今でも古くなっていないし、多様な人物と事件を配することによって、重厚で臨場感に溢れる力強い戯曲になっていると思う。子供の頭の上に置いたリンゴを射る有名なシーンは、代官による暴政を鮮明に示していて、名場面として語られるのも肯ける。2018/05/21
きゅー
6
15世紀のスイスが舞台。テルは支配者の定めた法に従わなかったと難癖をつけられ、息子の頭に乗せたリンゴを射落とすよう命令される。物語は親子の信頼と愛情、人々が手を取り合って祖国を守ること、戦い勝利することなどの要素を含んでおり、否が応にも盛り上がる。テルの物語と、民衆蜂起、それにシラーの創造による貴族ルーデンツの改心という三つのエピソードが組み合わさってこの短い戯曲の中に重厚感を生み出している。また、登場人物が多数出てくるが、これによって「民衆」の力を強く感得した。シラーらしい躍動感溢れる一作だった。2013/02/13
ちゅん
5
オーストリアの圧政に苦しむスイスの市民。そして、反旗を翻す精錬な弓使いのテル。「ウィリアム・テル」と聞けば誰もが思い浮かべる話ですが、表題はドイツ語読みです。そして、作者のシラーはゲーテと切磋琢磨した劇作家の仲間です。登場人物が多くて少し読みにくかったかなという感じはします。2017/08/27
KUMAGAI NAOCO
3
序曲で有名なロッシーニのオペラの元になったシラーの戯曲。舞台は14世紀初めのスイス。残虐で農民達を顧みない悪代官ゲスラーの支配下で、ヴィルヘルム・テルが住むウリの他、シュヴィーツ、ウンターゲルデンの3州が同盟を組み、オーストリア帝国から独立するきっかけとなった出来事を描く。有名なテルの息子の頭に載せた林檎をテルが弩で打ち落とすシーンも出てくるが、何につけてもゲスラーの悪役っぷりがやばい。ヒトラーが上演を禁じたのは、自身をゲスラーと重ねたせいか。2021/11/16