出版社内容情報
若きシラーはこの戯曲の中に,奸悪な陰謀と清純な恋,我欲の醜い奴隷たる権力者と良心の勇敢な使徒である無力者――というきわどい対立をきわめて鮮やかに浮き彫りにしてみせている.しかもこの名匠のふるう鑿からは烈々たる理想主義的情熱の火花がほとばしりでている.それはもっともシラー的な同時に今なおもっともドイツ的な火花である.
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ダイキ
3
「もし画の方に気を取られて、その画を描いた人を二の次にしたら、それが一番その人をお得意にならせるわけね。――だから神様のお造りになつた傑作に夢中になつて、神様御自身を見過ごして了ふとしたら、ねえお父さん、それは神様をお喜ばせするに違ひないでせう。」(第一幕 第三場)2020/05/12
酒井一途
1
権威的な大人たちの企みによって、若者の恋が引き裂かれる。若者がいいように操られるという意味で現代的であるかもしれない。人物はみな直情的で、一貫性はありつつも心が簡単に揺れ動きすぎる。よく言えば素直である。恋を語り合う場面などロマンスに溢れており美しい。/ ミラア「梟みたいに暗闇が好きなのは良心の疚しい奴ばかりだぞ。罪だの悪魔だのは明るみをこわがるものだからな」ルイイゼ「永劫といふものが直接(ぢか)に魂に話しかける時もやつぱり明るみを嫌ふのですよ、お父さん」2012/12/14
armerhund
0
1784年のシラーの戯曲。岩波文庫版も持っているが、筑摩世界文学体系の番匠谷訳で読んだ。宰相フォン・ヴァルターのたくらみ、その息子で陸軍少佐のフェルディナントと市民の娘ルイーゼの身分違いの恋。タイトル通り、このたくらみと恋が主題となっている。相変わらず登場人物(特にフェルディナント)の台詞にはシラーらしい熱さがある。個人的には好きだけれども、話の筋立て自体はさほど独創的なものではなく、愛の悲劇としての文学的価値は決して高くないように感じた。『ロミオとジュリエット』などを読み返すと何か発見があるだろうか。2015/08/26
Yasuhiro Watanabe
0
1784年、フリードリヒ・シラー25歳の作。「絵の方に気を取られてその絵を描いた人を二の次にしたら、それが一番その人を得意にならせるわけね。だから神様のお造りになった傑作に夢中になって、神様ご自身を見過ごしてしまうとしたら、それは神様をお喜ばせするに違いないでしょう。」恋する男に夢中で無茶しかねない年頃の娘にこんな事言われたら親父も困るわ・・・。 それはさておき確かな情熱がこもった一作。2013/11/30
erida
0
戯曲。「傭兵の二千年史」でミルフォード夫人が宝石をもらっているシーンが引用されていて、読んでみたくなった。面白くて困った。物語は楽師の娘ルイーゼと宰相の息子フェルディナントの悲恋。最初はロミジュリみたいなんだけど、ミルフォード夫人がでてくるあたりからアイーダみたくなる。調べてみたらヴェルディがオペラ化してるんだねー。キャラクターがバカっぽいけど、このキャラ立てのはっきりさがストーリーの歯切れの良さになっている気がする。ラスト、宰相は逮捕され、ルイーゼとフェルディナントは別の所で死ぬ。というのが妙に現実的。2012/10/01
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