出版社内容情報
陥落目前のアトランタから、スカーレットは命からがらタラへ帰りつく。変わり果てた故郷を前に、彼女は農園を守り抜くと神に誓う。
内容説明
1864年9月、陥落寸前のアトランタ。スカーレットはレットの助けを得てタラへ逃げる。だが命からがら辿りついた故郷も、安息の地ではなくなっていた。母亡き後、残された人びとを率いて愛する農園を守りぬくことをスカーレットは神に誓う―「前進あるのみ」。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Mijas
54
今年出版の岩波文庫版は、読み応えのある訳者解説。「ジェラルド・オハラはなぜ土地所有者になれたのか」という切り口で、先住民の移住政策の歴史と背景について書かれている。ジェラルドが手にした土地の意味を理解することで、スカーレットの強さがどこからくるのかわかるような気がした。タラ農園は、スカーレットの心の一部。荒廃したタラ農園の建て直しと存続を決意する。「子供として扱われるのはこれが最後。」スカーレットの成長ぶりが印象的。最悪の場面に遭遇しても、ベストな場面に転換しようとする意思の強さに勇気をもらえる。2015/12/11
さゆゆ
49
ネリーに乗り出撃したジョン・ウィルクスは、タラ周囲の最後の希望だった。なぜレットがスカーレットを土壇場で見捨てたのかが、未だによく分からない。タラにたどり着いてからの生活は、レットとは結び付かない。レットはスカーレットの領域に足を踏み入れない。タラには近づかない。レットがスカーレットに求めていたものを、どうやって手に入れるはずだったのか、検討もつかない。愛国心>>>スカーレットとなる、輝かしい一瞬だったのだろうか。2017/07/02
きいち
34
封鎖されたアトランタからタラへの帰還。あてにしていたレットは離れ、両親の力は失われた。飢餓や略奪、全ての問題に対処せざるを得なくなったスカーレットが鮮やかに覚醒するくだりに、高揚感が掻き立てられる。現実性や主体性といった、南部社会でレディとしてふるまうのに隠してきた資質が少しずつ顕現していく。そして、メラニーがその強さを発揮しスカーレットの横に並び立ってくれることも嬉しい。◇荒の解説は、タラがチェロキーインディアンの涙のあとにあるということ。踏みにじられた議会、新聞…。ああ、知らないことたくさんあるなあ。2019/02/12
みつ
31
いよいよ面白くなってくる。南北戦争は激化の一途を辿り、アトランタにも北軍が侵攻する。出産直後のメラニーとともにタラへ戻ろうとするスカーレット。自らを取り巻く状況に毒づきながらも前を向き行動する彼女は逞しい一方で、周りを顧みない性格も露わに。いまだにアシュリーに執心する内なる声が凄まじい。巻末の「口減らし」を望むつぶやきも、いかにも彼女らしい。生活の地がそのまま戦場となる内戦を女性の眼から描き尽くしているのには、感嘆あるのみ。先住民の歴史を学べる解説も価値があるが、p441に決定的なネタバレがあるので注意。2022/09/25
MATHILDA&LEON
29
【英ガーディアン紙が選ぶ必読小説67-Ⅲ/1000】敗色濃厚な戦争が続く中で、家族の病を知り、着の身着のまま必死な思いで家に辿り着くスカーレット。鋼の精神力を持ってしても挫けそうな日々を見守る読者もまた、虚しい思いに襲われる。あんなに無邪気で、わがままだったスカーレットが、少しずつ強くなる姿が頼もしいが、それと同時に、少女らしい無邪気さや奔放さが失われていく姿が何とも複雑で…。ちなみに今回の解説は『先住民族(インディアン)』について。さて、残り3冊、折り返し地点。まだまだ彼女の人生は続く。 2022/08/03