内容説明
帝政ロシアで生まれ、亡命作家として生きたナボコフ(1899‐1977)。999行から成る長篇詩に、前書きと詳細かつ膨大な註釈、そして索引まで付した学問的註釈書のパロディのようなこの“小説”は、いったいどう読んだらいいのだろうか。はたして“真実”とは?諧謔を好んだ『ロリータ』の著者ならではの文学的遊戯に満ちた問題作。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
189
ひどく実験的な作品である。 「青白い炎」という詩と その註釈から 構成される本作品は 正直読みづらい。 巻末の解説によると、註釈が一つの小説の 形を成しているらしいのだが… 詩人シェイドの一生を、詩とともに 語る… 意図はわかるが、残念ながら ついていくことが できなかった。2018/04/24
ケイ
125
「ブニン」「ロリータ」に続き、ナボコフの小説三作目にして、一番読みにくく辛抱のいる読書だった。前書き、999行の詞、詩の注釈の、三部からなる。詩人の詞を注釈で捻じ曲げることまでして、作者が得るものは、さて…? 試みとしてとても新しいもので、その試みの斬新さやユニークさは素晴らしいが、文学作品としての感想は再読しなければ書けそうにない。だが、再読する気になるだろうか。。。2016/02/28
まふ
115
「小説」というより詩の評解の形を擬制した「随想集」と言うべき奇妙な作品。ジョン・フランシス・シェイドという架空の詩人で大学教授の長編詩「青白い炎」に、隣家に住む同大学教授のチャールズ・キンボートが注釈を付けただけという体裁となっている。詩はしっかりと韻を踏んだ999行の堂々たるモノだが、その注釈はもっともらしく形を整えているものの、全く自由奔放に話題を膨らませつつ楽しんでおり、読者もそのおかげで楽しくなって来る。いわば全体がパロディであり、ナボコフの広く深い教養と「遊び心」満載の楽しい作品である。⇒2024/07/24
優希
78
学術書のパロディ的小説という発想が面白かったです。老詩人が描いた長編詩に、同性愛の関係にあった学者が膨大な註釈をつけていきます。詩に対する注釈でありながら、関係のない自分語りをするのは果たして意図的なものだったのでしょうか。註釈で語られる御伽話のような現実とパロディ、彼との思い出の中に見える歪み。それは語り手の異常性が根底にあるからかもしれません。文学的遊戯がカオスのように入り乱れているように感じました。狂人が理性で書いたと言ってもいいかもしれません。2015/07/09
藤月はな(灯れ松明の火)
53
999行にも渡る4つの長篇「私」詩を書いた亡くなった老詩人。そんな彼と同性愛の関係にあったという学者がそれに膨大な註釈を付けていく。註釈で紡がれる御伽話風の現実や詩へのパロディと彼との思い出話の中に何か、歪さが垣間見え、首を傾げつつもラストで恐怖のあまり、息を呑みました。まさかそんなことだったとは!!名作?銘作?迷作?私には難解でした。多分、英文の韻律や単語による言葉遊び、英国詩人の知識が有ったらニヤリとして楽しめたんだろうな・・・・。2014/08/29
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