出版社内容情報
銀行資本による農業機械化のため故郷の地を追われたジョード一家は,仕事を求めて緑の地カリフォルニアへ長い苦しい旅をつづけて移住するが,ここでもすでに労働者はあり余っていた.作者はアメリカの三十年代の社会をリアルに描き時代の病弊をえぐると同時に,あらゆる苦難に立ち向かって雄々しく戦う人間の姿を感動的に物語る.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
A.T
20
資本家と労働者、文明と自然の脅威、リアリテイと神秘…など大きな現代的テーマをいくつも織りあげながら進んできた物語が終わった。今も資本主義の社会に生きる自分にとっては見過ごせない事柄が迫ってきた。また、その後フラワーチルドレンやコミューンなどその後の世相にある世界観がその頃から庶民の生活に生まれてきていたというのも実感でき、歴史書のような感覚で読むこともできた。個人的には、1930年代にはまだ生きていた「インディアンとの戦いの思い出話」を披露する年寄りのリアリテイに感心した。2017/07/02
スイ
11
ああ…見事。 上中巻の疾走感を失わないまま、最後の荘厳なラストシーンまで連れて行ってくれた。 この巻でも報われない苦闘が続くが、作者の、彼らと共にありたいという願いと人の強さと温かさへの信頼が言葉から滲み出ていて、こちらが心強さを与えられる作品だった。 私、この作品、これから何度も何度も読もう。 訳もとても良かった。2017/11/26
秋良
7
【G1000】本当に困った時、助けてくれるのは貧しい人間だけ。彼らはどれほど飢えていても、同じ貧しい人間からは物を盗まず、富んでいる人間から盗んだ。時代に迫害される彼らが、いつか安住の地を見つけられることを願ってしまう。2016/06/12
星屑の仔
3
資本主義、規則法律、そして社会としての集団生活……、 それらに人間が振り回されていき、ついには人間としての生活していくうえで致命的なほどに困窮していくさまが非常にリアル。 どんなに自分たちが生活を改善しようと周囲に、そして社会にそれを阻害されていく様子は老舎の「駱駝祥子」を思い浮かべる。しかし両社は異なる。 あちらは未発達な社会において必ず善よりも先に悪が栄えて、それによってどんなに努力しようとも次から次へと沸き上がる悪に潰されてしまう話であった。2018/01/18
半べえ (やればできる子)
0
★★★★★ 旧新潮文庫で読む