出版社内容情報
十九世紀半ばのニュー・イングランド.ある農家の上におおいかぶさっている不吉な楡の木の下で,偏狭な老父を中心に,先妻の息子と淫蕩な後妻とが展開する愛欲絵巻は,さながらトルストイの『闇の力』を思わせるほどの傑作で,従来のアメリカ戯曲には見られない深刻さをもっている.オニールの最も円熟した時代に書かれたもの.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
55
愚直な信仰心を持ちながらも強権的なキャボットが三人目の後添え、アビーを貰った。ゴールドラッシュに浮かされた兄たちが農場から出ていく中、実の母親を父によって馬車馬のように殺された三男エビンは父を憎みながらも母が貰う筈だった財産に執着し、農場を離れない。そして歳が近いエビンとアビーは惹かれ合う事で悲劇へのひた走り・・・。子供の誕生に対し、真相を察した者たちが陰で何も知らぬキャボットを嘲笑い、アビーに粉を掛ける醜悪さが現実的。そして仮初の救いによって新しい人生を歩むラストが強烈。でも現実も似たり寄ったりなのだ。2025/06/14
fseigojp
11
演者に、実に細かい注文が付けられた演劇 でも、この劇を素で見て、それがわかるのかなあ2020/01/09
きりぱい
7
なにこのそっけないのにストレートな言葉の応酬!19世紀半ばニュー・イングランドの農民一家の、本能に根ざす感情がただ赤裸々に展開する。農場の厳しさに見切りをつけた兄たちをカリフォルニアのゴールドラッシュに送り出し、残ったエビンが陥る色欲。情欲とともによりどころが欲しいアビー。がめつく見えるキャボットもまた孤独を感じ、寂しさに屈っせんとする者であり。大切なもののために愚かになってしまう浅はかさが、アクの強い言葉でほとばしりきって終わった感。2011/12/02
quickening
5
ノーベル文学賞を受賞したアメリカ人作家の代表的な戯曲である。近親相○(正確には父親が再婚した妻に息子が…という感じ)に嬰児の殺害と、とんでもないタブーを犯した末に真実の愛に気づくことができたという、「オイオイマジかよ」的な作品だった。しかし、これは「人間の醜い本能」という部分に本当の美を見出したオニールならではの表現であるらしく、芸術とは何だろうかという問いを改めて考えさせられた。コンプラ重視の現代ではオハナシにならないレベルの作品(昔も一時上演禁止になったとか)だが、人間の本能はやはり醜いのだろうか?2024/02/01
lico
5
主要な登場人物がみんな欲望丸出しなのに最後は良い話で終わらせようとしていて笑った。欲望の美学とも言えそうな一貫性というか正当化は読んでいてくらくらするくらい面白い。登場人物ではキャボットが好き、何度へこまされても自分のなかで答えを見つけて前向きに生きていく所は、本人の性格が酷いのにどこか格好よく見えてくる。土地にしがみついて生きているところはコールドウェルの小説なんかに出てきそうなキャラクターだと感じた。戯曲は読んでいてもいまいち集中できないことが多いのだけどこの本は特に止まることなくするっと読めた。2016/05/30
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