出版社内容情報
九月の午後、藤の咲き乱れる古家で、喪服姿のローザが語り出す半世紀前の一族の悲劇。一八三三年ミシシッピに忽然と現れたヘンリー・サトペンは、無一物から農場主にのし上がり、ローザの姉と結婚、二人の子を得る。そのサトペン一族はなぜ非業の死に滅びたのか? 南部の男たちの血と南部の女たちの涙が綴る一大叙事詩。(全二冊)
内容説明
九月の午後、藤の咲き匂う古家で、老女が語り出す半世紀前の一族の悲劇。一八三三年ミシシッピに忽然と現れ、無一物から農場主にのし上がったサトペンとその一族はなぜ非業の死に滅びたのか?南部の男たちの血と南部の女たちの涙が綴る一大叙事詩。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のっち♬
133
南北戦争を挟んだ十九世紀の北ミシシッピを舞台に語られる入植者サトペンとその一族の興亡。I章で概要を説明し、II章以降でそれが何故起きたのか複数の視点で掘り下げていく著者ならではの複雑な語り構造。父子確執、近親相姦、三角関係などメロドラマ要素も多分で、進行と共に同一人物・事象が表情を変えながら豊かな色彩を帯びていく様は読み物として大きな魅力だろう。脱線と反復表現が多く含まれたローザの歪んだ語りも非感傷的なコンプトン一族たちの語りも人間の無意識を深淵から汲み取っており、部屋内に亡霊が跋扈するような迫力と熱量。2022/02/25
buchipanda3
120
いやあ冒頭からがっつりと引き摺り込まれた。19世紀のアメリカ南部のある郡(架空)を舞台とした長編叙事小説。物語はそこで長らく生きた女性、ローザの語りから始まる。それは彼女が生まれる前にその地に現れたトマス・サトペンという男について。そう、その謎めいた男こそが物語を支配する。ストーリーも目を惹くが、それ以上に回遊のように揺らぎながらも一切妥協のない語りの魅力が半端ない。中でもローザの止めどない語りが特筆。否定、否定の繰り返しは自己否定でも虚無でもなく、ただ自尊心を求めた願いなのだ。南部の亡霊を追って下巻へ。2022/10/24
やいっち
76
あまりに独得の表現手法に、少しは小説好きな吾輩も内容はともかく、登場人物の相関関係や語り手の把握に苦労した。世界に慣れたのは、上巻の半ばを過ぎてからか。念のために言い添えておくと、本書には訳者による丁寧な解説や人物紹介その他が施されている。それらを利用すれば吾輩が覚えた苦労も半減していたはずである。マルケスが影響を受けたのも納得。日本では中上健次の世界と通底するものを感じた。2020/01/05
HANA
56
南北戦争期、米国南部の一つの家の興亡を描いている。全て語りで物語が進んでいくというのが曲者で、人物の評価にしてもそれが事実なのか語り手の主観が入っているのか、という所から読んでいかなければならないのでスリリング。登場人物は多くないものの、上記のような読み方をしなければならない上、起きる出来事が只事ではないので一行たりとも目を離せなかった。各人物の行動が突飛すぎるが、これが南部というものか。後、人物の末路とかが語り手と聞き手の共通認識としてあるので、冒頭の登場人物表が非常に役に立った事を書き添えておく。2014/07/07
みつ
39
『響きと怒り』『八月の光』に続き、本作を読み始めたのが昨年の10月末。前2作以上に難解で、最初の数ページであえなく挫折。それでも冒頭の、蒸し暑い9月午後の描写から素晴らしく魅力的で、この季節ならばと再挑戦。長い長い一人称の語り。各センテンス自体が異常に長く、語られている事実と語り手の意識さらには想像が一体となり、どこに連れて行かれるかわからないまま、それでも後戻りを許さない感覚に囚われる。ところどころに挿入されるゴシック体が上巻最終章では全編を覆い、大きな悲劇が待ち受ける。未だ主人公の姿は判然とせず。➡️2022/09/17
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