出版社内容情報
アメリカ中西部の田舎からシカゴへやって来たキャリーは,華やかな都会生活の魅力にとりつかれたあげく,妻子ある酒場の支配人とニューヨークへ駆落ちする.そこで,キャリーは女優として売出し成功するが,男は没落し労働争議に巻込まれてゆく….都市小説の先駆となったドライサー(1871-1945)の代表作.(全2冊)
内容説明
アメリカ中西部の田舎から姉夫婦をたよってシカゴへやってきたキャリーは、生活に慣れるに従い、次第に都会の華やかな物質文明の魅力にとりつかれてゆく。そのあげく妻子ある酒場の支配人ハーストウッドと親しくなって、ニューヨークへ駆落ちする。都市小説の先駆となったドライサーの代表作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
131
表紙や冒頭の一ページに仄めかされている事を思うと、主人公の若い10代の女性が一人で都会に向かい、そこで出会う運命を思うと心配でならなかった。読んでみると、彼女は性悪ではないし、男を利用しようと考えているわけでもなく、むしろ真っ当に見える。とりわけ遠慮深くも辛抱がきくわけでもないから、姉夫婦の扱いや工場での仕打ちには我慢できないのだとしても、それらを耐え忍んでも違った不幸がやはり訪れるだろう。彼女が男達に要求している事はごく当然の事で、身勝手なのは男の方。キャリーには頑張って欲しい。下巻へ。2017/03/31
のっち♬
105
姉夫婦を頼ってシカゴに出てきたキャリーは物質文明の虜になり、出張販売人と同棲するうちに居酒屋の支配人と親しくなる。「頭はよいが内気で、無知と若さゆえの幻想をいっぱい抱えていた」彼女から見た米国社会の冷酷な実相がリアルに描かれ、仕事探しや労働状況、家庭崩壊、局面での心の機微など仔細な描写は登場人物の変化に説得力を与えるもの。特に生年が同じキャリーに対する著者の共感は強く、良心の声で葛藤する様にはカトリックへの反感が表れている。また、追い詰められた際のハーストウッドの思考を通して反主知主義的な人間観が窺える。2021/06/26
NAO
66
姉を頼って田舎からシカゴに出てきたキャリーがセールスマンの愛人になり、盛り場の支配人ハーストウッドとニューヨークに駆け落ちするまで。この作品以前は、キャリーのような境遇になる女性は、どんな理由があったにしても彼女自身が悪いのであり堕落して不幸になるのが当然という考え方が主流だった。だが、キャリーは、不本意な状況にあっても、自らの考えと夢を持ち、男たちを冷静に見ている。シカゴに来てから、またニューヨークに行くまでは、男のあとについているという状態だったキャリーが、ニューヨークでどのように変わっていくのか。2021/12/29
みっぴー
52
アメリカを舞台にした上京物語です。若い娘、キャリーが都会に住む姉を頼って田舎から出てくる話です。職探しと貧困にあえぎ、居候先で肩身の狭い思いをするキャリー。序盤は重苦しい場面が続きますが、知人の男性を頼り、居候先から飛び出したことで事態は一変。徐々に物質社会に魅せられていき、気がつけばTHEマテリアルガール。絶対カード破産するタイプです。派手好きでもなく、男を食い物にするわけでもないキャリーですが、何故か魔性めいた部分が見え隠れします。頭の中ではツイギーの容姿をイメージしながら読みました。下巻へ。2016/08/07
meri
39
キャリーはファムファタールなのか。それとも拝金主義の犠牲者なのか。「キャリーのなかでは、本能と理性が、欲望と思慮が、覇を競ってたたかっていたーーわれわれのような俗人ならばだれだって、そんな羽目に陥るだろう。キャリーは渇望の赴くままに従った。みずから引き寄せたというよりも、むしろ引き寄せられたのだ。」(144)喧騒の街シカゴの長くて暗い冬。ギャツビーたちの故郷を思い出す。2016/10/03