出版社内容情報
勤勉と土への愛着により,貧しい農夫から大地主へと駆け上がった王龍.変動する中国社会を背景に,彼と一族の歴史を描いた「大地」「息子たち」「崩壊した家」のこの3部作は,中国の内奥を初めて西洋に明らかにしてみせた作品として,衝撃を与えた.中国の民衆に深い理解と愛情を寄せたパール・バック(1892―1973)の代表作.(全4冊)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ちえ
39
20年以上前から気になりつつ横目で見ていた「大地」。読み始めたら面白い。貧しい百姓の王龍が一代で大地主になるまで。特に王龍と阿蘭、それぞれの黄家に対して持つ強い思いが伝ってきた。王家だけではなく暮らしている土地(村)の変わっていく様子も想像できた。王龍の思いを理解しない息子たち。次の世代はどうなっていくのか気になるところで1巻終。2019/01/18
なにょう
25
パール・バックは中国人だったのです。どの文章からも中国の感じがたっぷり。字も読めない、でも生活の知恵を持つ働き者の王龍夫妻の成功譚。紅楼夢や金瓶梅を読んでいるような大家になった王龍一族の暮らしぶり。美しくもなくただひたすら家族に尽くす阿蘭母さんは見事だね。…今も農村にはこんな女性はいっぱいいるだろう。★塞翁が馬。あらゆる災難が降りかかる。一方、災難が災難のまま終わるわけでもなく…そういった仏教につながる無常観が根底に流れるのを見る。やはりパール・バックは中国人である。2017/06/14
ソングライン
20
20世紀初頭の中国、貧しい農夫王龍が地主の黄家の奴隷として育った阿蘭と夫婦になり、物語は始まります。貧しさ、飢饉に堪え、作物を育て貯めた銀で土地を買い地主として成功していく王龍。子宝にも恵まれ、その人生に満足する王龍ですが、第二夫人を迎えることにより夫婦の絆は希薄となり、成長した息子たちは土地へ執着する父の生き方を蔑み始めます。貧しかった農夫の成功と老いを描く第一巻、物語は子供たちの時代に続くのでしょうか、次巻へ。2022/02/27
人間
16
百姓王龍の一生。若く貧しかった頃結婚し、成り上がって児孫に恵まれ繁榮する。次から次へと物語が目まぐるしく展開して面白い。また人物描写が秀逸。美しくない妻阿蘭の完璧さや、長男のダメさ加減、次男の性質の意外な発見、誠実な隣人の青とのやりとり。小豆の件の恩返しは胸熱。ブッデンブローク家を思い出して読んだが、こちらの方が面白い。訳者が良いのか文体もすっきりとテンポも良く引き込まれた。続編も読みたい。2019/01/04
みかん山のみかん
14
王龍という農夫が奴隷だった女性を嫁に貰い受け、激しい飢饉や動労に耐えながら、好機を上手く捉え富める者へと変貌する。飢饉の場面では生への渇望に圧倒され、妻の阿蘭の賢さと強さに目を見張り、浮気心が生じ、そして醒めていく男の心理描写に膝を打ったりしながら読んだ。1931年に書かれた物だが全然古臭さを感じない。「金持ちが金を持ちすぎると道が開ける。貧乏人が貧乏になりすぎても道が開ける。」なんと恐ろしいせりふ・・・紹介してくださった読友さんに感謝。2014/01/26