出版社内容情報
都会の女性キャロルは中西部の田舎町ゴーファー・プレアリィの医者の妻として町の改革にのりだすが,待ちうけていたのは因習と人々の根強い反感だった.――市民社会の成熟期をむかえつつあったアメリカを痛烈に風刺したこの作品は,一九二○年,発表されるやかつて前例を見ないほどの大反響をよんだ.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
226
【原書】なんともかんとも後味の悪い読後感。結局なにが変わったのか、誰かが変わったのか。なにも誰も、変わってない。キャロルは(おそらく当時においては)包容力のある夫に恵まれて、かなり好き勝手やっているけど、結局のところは元のサヤ。ふたりめの子どももできて、不満をくすぶらせながらこの街で生涯を終えるのだろう。キャロルと夫の会話を読みながらあまりのかみ合わなさに『男は火星人、女は金星人』の内容が頭にちらついた。作者がこれを書いた意味を考えるには再読が必要かも。2017/05/07
遥かなる想い
125
物語は 一貫して、20世紀初頭のアメリカの 田舎町の風景を描く。 キャロルとケニコット夫婦の 周りの人々も ある意味 善良で 屈託がない。 刺激のない 平穏な毎日を 描いた本作品 …正直 キャロルに感情移入ができず、 入り込めなかったのが 残念。 2019/10/19
ケイ
123
最終巻では、キャロルの無謀さにハラハラしながら応援する気持ちで読んだ。キャロルが持つ疑問は女性特有のものもあるが、非常に一般的でもある。知らない街に迎合していかなければならないのは、嫁ぐ女性に当てはまる場合が多いが、男性とてもそれから自由ではない。迎合と思わず、寛容・需要の気持ちがないと生きて行くのはいずれ困難になる。だから、彼女にそれを促すかのような終盤での会話においては、祈る想いで彼女の気持ちに変化が起こることを期待した。第1巻でわかったような気になっていたが、もっと深い物語だった。2017/04/14
NAO
57
キャロルは、町民たちとなんとか折り合いをつけて暮らしていくしかないと、町に戻る。そして、ゴーファー・プレアリィの人々も、それまでのごたごたは棚に置いて、戻ってきたキャロルを受け入れる準備を始める。この結果は、作者ルイスが、実は故郷の町に戻て受け入れられたかったという願望を持っていたゆえのことなのだろうか。結局何も変わらなかったではないかといえそうなのだが、町に受け入れられ町の一員となってからでも、改革はできる。キャロルにも、町の人々にも未来があるのだと思いたい。2017/12/30
ヘラジカ
22
遂に最後までキャロルの苦悩や恥辱を、まるで自分のことのように感受して読み終えた。俗な言い方ではあるが、考えさせられ、自らを省みる切っ掛けとなった。反発か調和か、安易にどちらか一方を選ぶことに甘んじるのではなく、キャロルのように闘って生きたいと強く感じた次第である。非常に有益な読書であった。シンクレア・ルイスもこの小説を書くことで、自分自身と闘っていたのではないか。作中人物の言葉や行動を借りることで、自身の考え方や見方を攻撃していたのではないだろうか。2016/02/20