出版社内容情報
都会の女性キャロルは中西部の田舎町ゴーファー・プレアリィの医者の妻として町の改革にのりだすが,待ちうけていたのは因習と人々の根強い反感だった.――市民社会の成熟期をむかえつつあったアメリカを痛烈に風刺したこの作品は,一九二○年,発表されるやかつて前例を見ないほどの大反響をよんだ.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
233
【原書】私の知る、メインストリートが一本しかない規模の街を想定しながら。転勤族の娘だった私には、キャロルの憂鬱が多少なりともわかってしまうというか。閉鎖的な街の中産階級奥様たちのイジワル...どこまでエスカレートするんだろ、とうんざりしながら進みます。2017/04/23
遥かなる想い
126
アメリカの田舎町ゴーファー・プレアリティを 舞台にした物語である。 都会から 田舎町に移ったキャロルという女性を通して、アメリカの田舎町の閉鎖性を描く。 上巻は 田舎町の改革を 目指すキャロルと 既存概念にとらわれる人々の対比だが、次巻以降の展開に期待。2019/10/16
NAO
60
この巻で印象的だったのは、ゴーファー・プレアリィに初めて足を踏み入れた時、都会育ちのキャロルが受けた印象と、田舎の村から出てきたビー・ソレンソンとのそれとの違いだ。キャロルにはすべてがうらぶれみすぼらしく見える景色が、ビーにとっては何もかもが素晴らしくさすがに大きな町は違うと感嘆の的になっている。二人がどこから来たか、どういった階級に属しているかによってこうも印象が違ってしまうという書き分けは、何とも象徴的で意味深だ。町の人の保守性よりも、キャロルの上滑りが気になる上巻だったが、以後どうなっていくのだろう2017/12/28
ヘラジカ
22
結婚を機に、都会から夫の故郷である田舎に引っ越した女性が、発展を諦め頽廃の空気を纏っている後進的な町を改革しようとする物語。シンクレア・ルイス自身の田舎町に対する嫌悪感が、つい最近東京から群馬県の片田舎に戻ってきた自分には、痛いほどに良く分かる。ここで言う田舎町とは、単に自然の比率が人工物に勝っている地区というだけではない。保守的で凝り固まった世界観を持ち、精神的な向上心を失った住民から成り立つ、中途半端な共同体を指すのだ。2016/02/16
しんすけ
7
日本人に膾炙せる『気違い部落』の合衆国版でなかろうかとの感慨をも得る。人口3千人程度のアメリカの田舎町ゴーファー・プレアリィは仮装的に発展途上地域の感を呈するが、内実は進歩を拒否する保守的な場所だった。そこには、貧乏人を怠け者として片づける安易性が充足するがために、進取の感が止まないキャロルは部外者に転ぜざるを得ない。上巻では、キャロルの身に悲劇は達していない。だが、それは間近に迫っていることは十分予感させる。先に田舎町と書いたが、東京の横町に入っても、同様の風景を「ママ友連」に見出すことは可能である。2016/12/17
-
- 和書
- 徒然モノ草