出版社内容情報
ジャーナリストとして辣腕をふるった当時,ビアス(一八四二―一九一四?)はニガヨモギと酸をインク代りに用いると評された.その皮肉と酷薄は短篇からも見てとれる.収録の七篇はいずれも死を前にした人間の演ずる悲喜劇をあつかったものだが,ここでは死さえも人間の愚さを示す一つの材料であるにすぎないのだ.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
musis
24
生と死の状態を考えさせられた短編集。落ちがどれも唐突でドキドキした。哲人パーカー・アダスンの話がシンプルなようで難しかった。命をなくす本人の生きてきた道、考え方が書かれていて面白い本だと思った。2015/03/15
nobody
11
“文学的”婉曲表現、翻訳独特の悪文体や用字、誤訳疑惑、仄めかし終始で真相不明のまま、空間的動きの解りにくさ等いつもの消化不良は付き纏うにしても、小説は読後どんな作品でもある種の充足感を齎す。それが魅力ではあるが生憎と私はそんなマラソン愛好家のようなマゾ的嗜好はあまりもちあわせぬので些か辛いものがある。ビアスを含め世の物書きは筆一本で創作世界を構築し表現している。私の読書はそれとの勝負である。「本来厳粛であるべきはずの死ですらビアスにとっては人間の愚かさを示すための一つの材料にすぎない」、それは違うのでは。2018/07/05
壱萬参仟縁
8
1891年初出。「ふさわしい環境」では、屋敷が住む人もなく荒れ果てている、幽霊が出る話題もある(79頁)。「ふさがれた窓」も幽霊がモチーフ(94頁)。暑かった夏には肝試しも・・・。だが、校長もセクハラで逮捕されたな。妻が亡くなり、悲しみは死者のために葬送の歌を奏でる楽器の数ほどもある・・・(97頁)。あとがき では、愛情の量とその分配の話が出てくる。予め、愛情の総量が決まっており、分配の数が増えると一つ当たりの量が少なるのだ、という考え(100頁)。そうだと思える。だから分配する相手が問われるところだな。2013/08/26
還暦院erk
7
図書館本。自分イベント「岩波文庫で100冊!」37冊目はページ数の少なさゆえに手に取った(笑)…が重い読み応え。一日一作品のペースで遅読。『アウル・クリーク橋の一事件』のデジャヴ感が強烈だったので、自分の読メで既読本をたどっていったら筒井康隆『短編小説講義』での内容解説で知ったのだとわかった。その際は本作品に興味ひかれることなくノートも取ってない…でも頭のどこかに残ってることがあるんだねぇ。ビアスの短編のエグい死の描写、突き放されたような読後感はカフカのそれに似た印象。『生死不明の男』の死因が不明だった。2019/10/14
kurupira
5
最後の一文でガラッと世界が変わる感じ、、かなり昔の作品なのに凄いなあ。普通の書店では購入できないと思って神保町の古本屋でやや割高で買ったが、、、池袋ジュンク堂で普通に売られていた。。ウーン、、