内容説明
若きW・アーヴィングは、イギリスに渡り、敬愛する作家スコットを訪ねる。『スケッチ・ブック』や『アルハンブラ物語』で花開くことになる著者の転機となった旅で、歓待してくれた大作家の風貌やスコットランドの高知の美しい風物を細やかに描いた訪問記。
目次
アボッツフォード邸
メルローズ寺院
愛犬メイダ
ロバート・バーンズ
トマス・キャンベル
晩餐のひととき
若きイングランドの騎士
ロバート・ブルースの心臓
北方のキャンベル
“足長ローキー”の結婚
詩人トマスと妖精の国の女王
アンドルー・ゲムルズ
イングランドからの来客
『マーミオン』
執事レイドローとエトリックの詩人ホッグ
スコットランドの妖精
スコットランドの聖女
別離
回想
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
syaori
55
若きアーヴィングが『アイヴァンホー』や『湖の麗人』の作者スコットの屋敷を訪問した回想記。その日々を作者は「人生で最も幸せな時」と言いますが、スコットのユーモアに満ちて愛嬌たっぷり、寛容で優しい歓待には、読んでいるこちらの心にも快い、暖かい気持ちが湧き上がってくるよう。その回想に、スコットが語るスコットランドの伝説や、その伝説を生み出した土地とそこに住む人々への愛、家族への愛が魅力的な逸話の数々となって輝きを添え、スコット邸の訪問は、私にとっても楽しさで胸が一杯になる体験となりました。2018/08/01
きゅー
13
ワシントン・アーヴィングがイギリスを旅していた時、彼が敬愛する作家ウォルター・スコット邸に数日間滞在する機会を得た。その時のことを綴ったエッセイ。尊敬する年長者への敬いの気持と、友愛の気持が混じっており、文章には衒いや形式張ったところが見られない。そしてスコットによる、スコットランドの風景や伝説を語るときの何気ない仕草が実に堂々と、自然な様子で実に親しみを感じさせる。文学者というと気難しい人間をイメージするが、スコットの態度はおおらかで、温かみに溢れている。スコットの作品をぜひ読んでみたくなった。2015/08/04
壱萬参仟縁
11
1835年初出。「スコットが書物を読んでいる間、(略)賢い猫は暖炉のそばの椅子に座って、まるで読む声に耳を傾けるかのように目を据えて厳(いか)めしい態度でじっとしていた」(54頁)。猫にも賢いのがいる。これからの季節、暖をとるのは読書家にとっても必須。長年独身のローキーが突然、結婚願望に駆られ、身分は低い若き女性が相手の不釣り合いさ(73-74頁)。でもいいよ。それが愛だから。2013/10/27
花林糖
10
アーヴィングのウォルター・スコット邸滞在記。若きイングランドの騎士・足長ローキーの結婚が特にお気に入り。2015/08/22
ワッピー
7
ワシントン・アーヴィングのスコット邸訪問記。アーヴィングについては「スケッチブック」ほか、いくつかの作品が訳されていることしか知りませんでしたが、この本によって初めて詳しく知りました。W・スコットの人柄とユーモア、ホスピタリティがよく伝わってきます。スコットランドの歴史や月下のメルローズ寺院、そして高みから見渡すこの地方の風景の美しさに圧倒され、スコットが多くの愛犬の墓に戯れに記念碑を作っているエピソードには笑いました。いつか、実際にこの地に立ってその風を感じてみたいものです。2016/01/31