出版社内容情報
暑熱去らぬ夏の夜道,「ロンドンに行きたい」と声をかけてきた白ずくめの女.絵画教師ハートライトは奇妙な予感に震えた-.発表と同時に一大ブームを巻き起こし社会現象にまでなったこの作品により,豊饒な英国ミステリの伝統が第一歩を踏み出した.ウィルキー・コリンズ(1824-89)の名を不朽のものにした傑作.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
208
下巻は立ち込められた霧がゆっくりと 解消していく印象だった.. 1849年からの三年間を描いた物語。 時代背景が色濃く反映され.. ハートライトとローラの恋物語的な展開が 続く。悪役が明確なため、わかりやすいが、 読んでいてまどろっこしく感じるのは 時代背景の違いのためなのだろうか。 最後は落ち着くところに落ち着いた 穏やかな終わり方だった。2016/07/17
のっち♬
118
帰国して姉妹の前に現れたハートライトはパーシヴァルとフォスコの秘密に迫り、ローラの身分を回復させるべく立ち回る。パーシヴァルをめぐる挿話では教会が役所仕事の一部を担当する当時ならではの設定が組み込まれており、偽情報に加えて妨害や火事などハードボイルドな趣きの活劇。フォスコの正体に関しても展開自体はスピーディーで順調なものだが、ペスカを絡ませたりとエンターテイメントとしてのクライマックスをうまく作っている。二人の悪役が衝動性と冷静さを併せ持った人間味のある人物像だったことが伝わってくるフォスコの手記も秀逸。2018/06/13
セウテス
74
上巻で感じていた不穏な空気、中巻での悪意に対するやりきれなさも、遂に終結の時を向かえました。ここまで読んで、色が濃すぎるキャラの悪役から、ヒロインのどん底までの転落、ハートランドのあまりにも普通の人である設定までも、綿密に考え抜かれた読ませる匠さであると気付きます。「素晴らしい」読み終えて、先ず出てきた言葉です。相続サスペンスの始まりとも言える作品ですが、至る所に計算されて置かれている伏線、論理的に証明される推論と本格ミステリーの凄さを味わえます。この読後感は、全ての読書好きに感じさせてあげたいと思う。2016/01/11
mii22.
57
凄い!凄い!堪能した!読書の楽しみとはこういうものだ。用意周到で抜かりのないフォスコ伯爵の陰謀。絶体絶命のピンチに立たされた姉妹の前に、悲劇の妹ローラの愛しい人ハートライトが帰ってきた!「私は、まだ完全に負けたわけではありません。」強靭な精神力を持ったマリアン・ハルカムと勇気と愛情に溢れたウォルター・ハートライトに拍手を!そして白衣の女アン・キャセリックは聖なる安息を得ることができた..。こんなに読後感の素晴らしいミステリは初めてだ。まさに傑作!2015/12/19
NAO
53
パーシヴァル卿とフォスコ伯爵が企てた、とんでもない陰謀。こういうプロットは他にもあるが、巧みな伏線と圧倒的な描写は、全く古さを感じさせない。悪役たちの魔の手をかいくぐって帰国し探偵役を買って出たハートライトの奮闘ぶりも称賛に値するが、やっぱりこの作品の一番の功労者はマリアン・ハルカム嬢ですね。長い話を読み終えたあとでも、やはり強く心に残っているのは真夜中の道に立つ白衣の女の姿。この構成力と表現力、とても150年以上も前の作品だとは思えない。2015/12/26
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- 和書
- 空想「戦争」読本