内容説明
「すべての動物の平等」を謳って産声をあげた動物農場。だがぶたたちの妙な振舞が始まる。スノーボールを追放し、君臨するナポレオン。ソヴィエト神話とスターリン体制を暴いた、『一九八四年』と並ぶオーウェルの傑作寓話。舌を刺す風刺を、晴朗なお伽話の語り口で翻訳。
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本屋のカガヤの本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アキ
122
オーウェルのスターリン批判は、自身が1936年スペイン内戦に参加した際にソ連の粛清のため多くの仲間たちが投獄され殺された経験から来ている。その経緯はウクライナ語版のための序文に詳しく述べている。1944年イギリスで四つの出版社に断られたのは当時ソ連が連合国側だったからであり、1945年8月17日英国で刊行されると直ちに売り切れ、翌年米国で出版されると冷戦の影響で桁違いに売れた。後の一九八四も全体主義の批判だが、本書はより直接的なおとぎ話であり、ナポレオンがスターリン、スノーボールがトロツキーを表している。2023/02/13
荒野の狼
64
ジョージ・オーウェルがスターリン批判を目的に執筆した小説で、半日もあれば読了可能。レーニンの革命から、スターリンによるトロツキーの排除、粛清、ソ連とナチ・英国との関係の歴史を知っていれば、物語の出来事がどの出来事を表しているのかは推察がつく。とくに粛清を再現したくだりは、まわりの動物たちの反応も含めて、恐怖政治の恐ろしさがよく描かれている。2020/11/08
Mijas
59
1917年の革命から1943年までのソ連の歴史に対する風刺。スターリンを露骨に強欲で狡い豚として描く・・その出版へのオーウェルの切なる思いは付録「出版の自由」「ウクライナ語版のための序文」から伝わってくる。スペイン内戦から脱出してきた時、どうやってソヴィエト神話を暴露しようかと考えたという。豚が支配する農場(独裁者が君臨する国家)の本質を突く。スターリンの恐怖政治。ゲーペーウーの存在。トロツキーの暗殺。過酷に労働させただけの五カ年計画。権力者の腐敗と堕落。実在の人物や出来事と対応させて読み解くのが面白い。2015/11/19
molysk
57
すべての動物は平等である―この理想のもとに、人間の農場主を追放した動物たちは「動物農場」の成立を宣言する。だが、知性の高い豚が指導者層となると、有力者のスノーボールを追放したナポレオンが独裁を確立する。いまや、豚とその取り巻き以外の動物たちは、ナポレオンの恐怖と暴力の下で、かつてよりも過酷な搾取と貧困にあえぐ。そして、豚たちは二本足で歩行をはじめ、その顔は人間たちと見分けがつかなくなっていた―。ロシア革命からスターリン独裁への流れをなぞり、共産主義の非情な実態を告発する、ディストピア世界のおとぎ話。2019/04/21
ケイトKATE
54
ソヴィエト体制の欺瞞をジョージ・オーウェルが、動物に模しておとぎ話風に皮肉っている。登場する豚のナポレオンやスノーボールなど、ソ連を知っていると、誰をモデルにしているか明白である。誰もが平等な社会を作るという理念を謳いながら、次第に権力掌握のために理念を都合良く捻じ曲げていった様子をオーウェルは見事に書いている。オーウェルが『動物農場』を発表した当時、ソ連を賛美する人が多い時代であった。そんな時代に、ソ連が平気で嘘をつき、冷酷で人間の命を軽視する体制であることを見抜いたオーウェルの洞察力に敬服してしまう。2025/02/26