出版社内容情報
イギリスの作家モームが,世界文学のなかから小説10篇を選び,その作者と作品について実作者の視点から論じたユニークな文学論.小説を読む楽しさを主眼に,作者の生れ育った環境や性格,日常生活や人間関係などからその人間像に迫り,作品が生みだされる過程を生きいきと描く.高慢と偏見,赤と黒,戦争と平和など.(解説=菅野昭正)
内容説明
世界の十大小説として選んだ十篇を、実作者の視点から論じたユニークな文学論。まず作家の生涯と人物について語り、作者への人間的な興味を土台に、痛快な筆さばきで作品を解説する。(上)では『トム・ジョーンズ』『高慢と偏見』『赤と黒』『ゴリオ爺さん』『デイヴィッド・コパーフィールド』を取上げる。(全2冊)
目次
1 小説とは何か
2 ヘンリー・フィールディングと『トム・ジョーンズ』
3 ジェイン・オースティンと『高慢と偏見』
4 スタンダールと『赤と黒』
5 バルザックと『ゴリオ爺さん』
6 チャールズ・ディケンズと『デイヴィッド・コパーフィールド』
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
93
この本も私は岩波新書での再読です。モームがある雑誌のアンケートに応えての世界の十大小説を選んだことについてかなり詳しく書かれています。上巻では「小説とは何か」と「トム・ジョウンズ」「高慢と偏見」「赤と黒」「ゴリオ爺さん」「デイビッド・コパーフィールド」をとりあげています。最初の小論は非常に参考になるものでモームの小説論といった趣があり優れた小説とはどのようなものかが詳説されています。ここに取り上げている5つの作品と作家論では「ゴリオ爺さん」が未読なので参考になりました。2024/06/20
lily
25
モームが語る作家なら十人と言わず、世界の作家大辞典を編んで欲しかったくらい、公平な評価で信頼でき、かつ納得させる毒舌家でユーモアの才能を持って臨場感溢れる人物像を浮き彫りにする伝記は退屈することがなかった。恋やお金の工面や夫婦関係など問題点(内面に原因があるのだけど)が山積みで苦悩がなくなることがなかったからこそ小説を書くことで昇華した。2019/06/10
いちろく
24
紹介していただいた本。書評集だと思っていたら違った。いや、著者から産まれた作品は著者自身の分身、と考えるならばこの本は書評集になるのか。紹介本の著者の人物像に迫る内容は、人物を通じて作品を見ているようで、面白い。上巻は5作品。いや、5人の著者の紹介と書く方が正確か。お気に入りは、ジェイン・オースティン。2016/04/03
501
19
モームが選ぶ小説10作品の書評。上巻は内5作品をおさめる。作家の人物を知れば作品の理解も深まるというスタンスの書評で、作品そのものより、作家本人がどのような人物であったかが主体となっている。時には辛辣な言葉も遠慮なしだが、作品とその作者への愛情が感じられ大変面白い。2017/11/02
きゃれら
17
とても面白くて一気読みした。この本の存在を知ったのは、比較的最近で読メ登録とそんなに違わないはず。10作品とも再読も含めて登録後に読んだのは、この本を読みたいがためでもあった。読んでみると想像したのと違って、作品の事より作家の事についての文章が多い。かなり辛辣な書き方で、作品についても欠点に関する記述が目立つ。作品読後の身で読むとモヤモヤが解決されてスッキリするんだけど、それでほんとにいいのかな。上巻は当たり前の記述方法の作品が集められたらしく、下巻のそこが特異な作品と対照しているのかもしれない。2023/07/12