出版社内容情報
別名「老妻物語」としても知られる,イギリスの自然主義作家ベネット(1867‐1931)の代表作である.作者は自分の生まれ故郷「五つの町」を舞台に,この町で仕立屋を営むベインズ夫人とその2人の娘コンスタンスとソファイアの2代にわたる女の生涯と栄枯とを,正確な写実と伝統的なユーモアの円熟した筆致で描き出した.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まふ
113
ソフィアは住んでいるパリの下町のアパートの権利をを運よく獲得し、さらに高級住宅街のアパートの権利を得て次第に富を積み上げる。一方コンスタンスは夫のポヴィ氏が亡くなり家業の権利だけ残して安逸生活に入る。ある日ソフィアがパリで大成功を収めているという報を聞き、二人は再会する。さらに、ソフィアのデタラメ亭主であるジェラルドの消息がつかめ、ソフィアが会いに行くも時遅く死んでいた…。⇒2024/11/30
ケイ
110
作者のフランスへの想いがソフィアの行動を通して示されているように思う。出来の悪い子ほどかわいい…と言ったところか。コンスタンスは、寡婦となるも子育てに対する態度など、一般的な女性といえる。一方、ソフィアは、パリで男に捨てられるも、徐々にしっかりとした女になっていく。そのパートが一番読んでいて楽しかった。結局勝ち組として物事を見るコンスタンスが、それでもソフィアに対し何か美しいものを感じているのが、読んでいて優しい気持ちになった。さて、女二人の物語は、「女の一生」を超えられたか?軍配はやはりモーパッサンへ。2016/07/27
扉のこちら側
70
2016年248冊め。【159-3/G1000】ついに姉妹の再開の時。時代も移り変わり、十代の姉妹も(当時としては)老婆と言われる年齢に。旧訳では「老妻物語」というタイトルのこの本だけれど、こう大河的に姉妹の一生を描いているところからすると今のタイトルの方がよかったのかな。しかしシリルは最後までぶれずに自分の道を歩み続けるのだな。 2016/04/10
NAO
55
町から一歩も出ることなく、家の没落を見続けたコンスタンス。パリで金持ちになったソフィア。二人の生涯は全く違うようだが、パリに暮らしたとはいってもソフィアのつましい生活は故郷の姉の生活とあまり変わるところがない。結局、「かたくなに家を守る」という二人に組み込まれた遺伝子が、それぞれの場所で同じように働いていたということではないだろうか。作者は、パリであまりにも滑稽な太った老婦人を見かけて、こんな人にも若く輝くときがあったのだろうに思ったという。コンスタンスの晩年は、作者が見かけた老夫人そのものだが、⇒2017/02/28
秋良
8
色々と起伏はあったものの、後世にのこる何かを成すこともなく、時代に忘れられるように最期を迎える二人。でも人生ってそんなもんかも。読み物としての面白さはモーパッサンの方が上。2018/10/03