出版社内容情報
アフリカの奥地に象牙採集をする人々の上に起こった事件を作者自身の体験にもとづいて書いた作品.『颱風』『青春』と共にコンラッドの中短篇の代表作であるが,作品の芸術的根強さにおいて他の二つを凌ぐ.ここには作者の原始に対する驚異と文明に対する呪詛とが熱病のような激しさであらわされている.
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
325
ページ数の割には時間を要した。それは、本書の表現が情景を語る場合においても、同時に内的な喩として機能しているからである。船長マーロウ(それは多分にコンラッド自身の体験に根差すものと思われるが)の回想という形式をとったことも一応は成功しているようだ。アフリカの熱帯雨林の川(モデルはコンゴ川だろう)を遡ることは、同時に自らの心の内奥へと遡行することでもある。すなわち、「闇の奥」は、文字通りに暗黒大陸の自然と、そこに生きる未知なる人々であるとともに、世紀末に生きる自らの心の闇を覗き込むことでもあったのだろう。2015/09/21
夜間飛行
245
恭順な黒人が、わけもわからず首鐶と鎖で繋がれた黒人を連行していく。軍艦はジャングルに向かって砲撃を続け、兵士が毎日三人ほど熱病で死ぬ。崩壊する岸、泥土の濁流…地形への傷が日々刻まれる。森の中で静かに飢えて死を待つ人々。《おびただしい加工製品や、木綿屑や、ガラス玉や、真鍮線が、後から後から奥地の闇に運び去られていく。その代わりにあの高価な象牙が、少しずつ運ばれてくるのだ。》「地獄の黙示録」や「フィツカラルド」で観た映像、「野火」や「ひかりごけ」の人食シーンが頭をよぎった。同じような無意味さは、今もまだある。2021/12/02
やいっち
123
今回読んで、傑出した作品だと実感した。「アフリカの奥地に象牙採集をする人々の上に起こった事件を作者自身の体験にもとづいて書いた作品」というが、むしろ、「作者の原始に対する驚異と文明に対する呪詛とが熱病のような激しさであらわされている」という評のほうが的確だろう。本作品を読むのは楽じゃない。むしろ難儀だろう。それでも、闇の奥へ刻苦しながら分け入る夢魔の魅力は何物にも代えがたい。……但し、裏面には白人欧米のアフリカやアフリカ人への苛斂誅求が厳然としてあったし、多分今も続いていることを忘れちゃならない。 2021/11/28
ベイス
93
クルツとは何者でどんな人物なんだろう?という期待感の煽り方が実に巧みで前半は面白い。が、煽るだけ煽って、ようやくついに出会ってもほとんど黙して語らず。どうしても地獄の黙示録を連想しながら読み進めてしまった分、なかなかの拍子抜けだった…アーレントの問題意識に通じる部分の描写もほんのわずかでこちらも拍子抜けという…2023/01/07
中玉ケビン砂糖
84
先日『インターステラー』を観た、観たあとで冷静に考えてみれば、理論派のSF小説ならば誰かがやっていそうな「手垢感」もなんとなく感じたのだが、そんなことは問題ではなかった、映像作品というものは魔力を生み出す、劇場のスクリーンで観ればなおのこと、まさにド傑作だった、なぜこんなことを書いたかというと、もちろん『闇の奥』をダシにして『地獄の黙示録』を語るためである2014/12/11