出版社内容情報
「テス」とならんでハーディの名声を世界的に高めた小説.パン屋の小僧をしながら学問に志していた孤児ヂュードも肉欲の女アラベラと関係したばかりに人生行路に狂いを生ずる.彼は従妹シューの精神愛にひかれ,新しい家庭を築きあげようと試みるが過去の傷が2人を悲運へと追いやる.霊肉の争いを描いた深刻な近代小説である.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
テイネハイランド
13
なんともうじうじとした陰鬱な感じで物語が進んでいきますが、下巻になって展開は加速し、第6章第2節で一つのクライマックスを迎えます。遠藤周作の「海と毒薬」でも思いましたが、読んでいる人にインパクトを与える小説というのは、かなりうまく書かないと小説としてのあらが目立つように思います。この本を「割り切ってシュール系コメディとして読めばいい」というみっぴーさんの興味深い意見がありますが、フォークナーの諸作品と違って、生真面目でウェットなハーディーの作品に対してはちょっと厳しいかもしれません(G1000)。2017/05/08
shinobu
1
古典です。19世紀にこの話を書いたってすごい。アラベラとシューの人物造形は見事に対照的。今でもこういう人たち実際にいますね。ジュードも相当気の毒だけど、実は一番いい人はフィロットソン先生じゃないでしょーか。2015/06/03
takeakisky
0
シューの臆病な浅知恵にとことん流されるヂュード。モラトリアムを消極的に有り難がる気持ちは、身に覚えのあるもの。責任の放棄。この辺りの男の悪気のなさを上手に書く。ボールが彼女の側にあるように見える時は安心していられる。どこまでも幼く成熟しない二人。目的へ向かうときに生じることの軽重が量れない。Little Father Time。ちびの時の翁。その暗い衝動。極端から極端へ振れるシュー。学問で身を立てる点にヂュードが考察した二、三世代必要というのは、彼らの行動と倫理観を変えるにも同様に要るのかもしれない。2024/09/29