出版社内容情報
苦闘六年,たびかさなる敗退にもめげず,一八六五年ついに魔物の山マッターホルンは征服された.だが,その帰途,悲劇が起った.本書はウィンパー(一八四〇‐一九一一)が,その一部始終を,彼自身の手になる繊細華麗な木版画を豊富にちりばめつつ,イギリス風のユーモアを交えて淡々と語ったもの.山岳文学の古典としてあまりにも有名.
内容説明
苦闘6年、七たびにおよぶ敗退にもめげず、とうとう彼は目的を達してマッターホルンの頂上に立った。しかし下山にかかってまもなく、悲劇は起こった…。アルプス登攀史上の黄金期にその名を残す偉大な登山家ウィンパーのこの6年間の登山記録は、登山のつづくがぎりいかなる時代にも広く読まれる名著である。
目次
第10章 コル・ド・ピラットの初登越
第11章 モンブラン山群の登攀
第12章 モーミング峠の初登越
第13章 グラン・コルニエの初登攀
第14章 ダン・ブランシュの登攀
第15章 マッターホルン登攀・第七回の企て
第16章 アオスタの谷グランド・ジョラスの初登攀
第17章 コル・ドランの初登越
第18章 エギーユ・ヴェルトの初登攀
第19章 コル・ド・タレーフルの初登越
第20章 ルイネットの初登攀とマッターホルン
第21章 マッターホルンの初登攀
第22章 マッターホルンの下山
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬参仟縁
4
14ページの挿絵雪の岩溝(クーロアール)。落ちたら最後だ。日本経済社会もこんな感じと一緒に思える。こうした状況をみると、田部井さんとか、野口さんとか、登山家の皆さんはどうして命がけで挑戦できるのか、と思ってしまう。先ほどは手指が凍傷でダメになってしまった男性がTVに出ていた。「失敗の方が、どうも人の役に立っている」(76ページ)。昨日のSBCともラジで談慶師匠も言ってた。また思い出したのは、五木寛之氏の『下山の思想』幻冬舎、2011年。評者は登山でオヤジギャグ言ってたのも思い出したな。勇気と忍耐の人生訓。2012/12/23
Takashi Arai
2
氷河の話などが詳しく書かれていて興味深かった。最後のマッターホルン初登攀の話は、結末を知っているだけに途中で止められず60ページほどを一気に読んでしまった。2015/03/16
kinaba
1
ラスト、登山とは、特に未踏峰への挑戦とは人にとってなんであるか滔々と語る下りが圧巻でした。朗読で聞きたい。2014/07/23
梅子
0
登山の描写以外にも、氷河の浸食や「白痴」の原因への考察など、とにかく自由奔放に書きたい事を書きまくる。専門家の説に対して自説を自信満々に記しているところが面白い。昔の貧弱な装備と乏しい情報、迷信などによって困難を極めていたアルプスの初登頂競争に対して、迷信に左右されない新しい発想でマッターホルン初登頂を勝ち取った著者達には、山岳界の新しい時代の到来を感じた。ポーターも使った登山ではあるが、間違いなくアルパインスタイルはここから生まれたんだなと思った。2017/08/03
nox
0
山に関連して細かな雑学が出てきて楽しめた。下巻の登山は概ね楽に登れた感じだが、唯一マッターホルンだけは悲劇的な結末に終わる。山案内たちの仕事ぶりがよく書き表されていると思う。マッターホルンの登頂によってアルプス黄金時代の終焉が訪れたが、そこに至るまでに様々な物語があったのだなあ。アルプスの美しさについてこれでもかと描写されているので、行ってみたくなった。2023/04/17