内容説明
1842年1月、29歳の若き人気作家ディケンズ(1812‐1870)は、新興国アメリカの地に降り立った。“新しき国”の人々、文化、風土、社会制度―ディケンズは好奇心に満ちた目でアメリカの姿をつぶさに観察し、母国イングランドとの比較もまじえながら、ときにユーモラスに、ときに皮肉っぽく、生き生きと描く。本邦初訳
目次
第1章
第2章
第3章
第4章
第5章
第6章
第7章
第8章
第9章
第10章
第11章
第12章
第13章
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のっち♬
118
1842年1月アメリカへ降り立った著者が旺盛な好奇心で観察する人々、文化、風土、社会制度。根がジャーナリストだけに公共施設が多い。ヘレン・ケラー入学の契機となったローラの症例は読み物として充実。洗練された社会制度は著者にイギリスの煩雑な法定手続きや性別・身分の社会格差や慈善活動・教育制度の遅れを痛感させた。美点に称賛と敬意を惜しまない視点はフェアだ。一方で、ところ構わず唾を吐く不衛生や更生システムの矛盾、人種差別などは生理的嫌悪を顕にする。フィラデルフィアで囚人の狂気を想像する場面は『二都物語』に通じる。2022/07/13
壱萬参仟縁
8
「船長が行ってしまうと、私たちは気を落ち着けて読書にとりかかる。その場所が十分明るければの話だが」(49ページ)。評者はいつも自宅で折り畳み机にノートPC、もう一つの小さい机に電話機と蛍光灯がある。その明りでやっている。独房監禁ということなのでまたもやベンサムの一望監視装置(パノプティコン)を想起。「農園で綿花を収穫する黒人たち」(303ページ)の絵。これを見ると、彼らは賃金をもらってなくて、言われるがまま、やらされているんだろうと思うと、人権が無くて不憫である。2013/01/28
がんもどき
5
「クリスマスキャロル」のディケンズが、独立してまだそんなに経っていない頃のアメリカを探訪した様子を書いたもの。刑務所の様子を長々と書いたり、都市の人の様子を豚に例えて書いたりしててアメリカ人には不評だろうなと思う。表紙には、時にユーモラスに描くと書かれているが、ユーモアを書いた部分はあったっけと思うくらい少ない。イギリス人らしい皮肉な調子が前面に出ていると感じる内容だった。下巻へ。2022/03/05
あくび虫
5
『イタリアのおもかげ』よりも、分かりやすくて、純粋に楽しめました(実際にそうなのか、私が慣れてきただけなのか)。読んでるだけで顔をしかめたくなる不潔や、おぞましい人権軽視があるわりに、爽やかな色調で進んで行きます。なにゆえディケンズが慈善施設や刑務所をめぐっているのかは知りませんが、詳細に説明されていて興味深いです。ーー心象がまったく描かれない奥さんが、非常に気になります。絶対にうんざりしていたと思うのですが。2016/10/04
てり
4
1842年の渡米ということで南北戦争前のアメリカ。ボストンの監獄や精神病院。ニューヨークの監獄やスラム。奴隷制への嫌悪と嚙みタバコへの嫌悪。インディアンの酋長とのやりとりが印象的。どこにでもいる豚たちも。(下)へ続く。2022/02/24