出版社内容情報
ユーモアと明るい笑いの作家ディケンズ(一八一二―七〇)の世界も短篇に目を転ずると相貌を一変する.自らの血に流れる狂気を自覚した男が妻を殺害するに至る「狂人の手記」,実直な鉄道員が幽霊の発する警告に怯える「信号手」など,人間の暗い異常な心理を追究した作品を中心に,幻想的作風の短篇も加え十一篇を収録する.
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本屋のカガヤの本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ペグ
86
わたしにとって短編は初めて。クリスマスキャロルの原点になるかのような作品も。ディケンズは真のストーリーテラーだ。再読予定。2021/11/30
のっち♬
80
「我々のほとんど誰でも、人生のうちにあるロマンスを見ているものだ」短編でも著者はあえてそれを強調する。他にもホラー、サスペンス、ユーモア、同性愛など作風は幅広い。コミカルな人物造形がよく取り沙汰される彼だが、『狂人の手記』など見られるように、人間の異常心理に対する省察眼の鋭さも抜きん出ている。中でも『信号手』は、合理的説明の試みをすり抜けるような底知れぬ恐怖を残す傑作。「物事の裏の表とを見て、一番良い方に虫眼鏡をあてがってみたらいい」と、読者を励ますような文面も彼らしい。長編とはまた違った魅力を放つ一冊。2018/08/06
藤月はな(灯れ松明の火)
79
私のディッケンズという作家の印象は「社会派・長編向け・啓蒙的」だった。この短編集はそんなイメージを大きく、覆してくれました。「墓堀男をさらった鬼の話」は『クリスマス・キャロル』の原型ともいえるだろう。短い人生を楽しまなくては損。それにしても鬼の奇妙な恰好が絵で拝めるなんて思いもしなくて僥倖。「奇妙な依頼人の話」は『モンテ・クリスト伯』ばりの復讐劇が展開される。同時に破産は自己責任であり、家族でさえも金可愛さの余りに救わないという冷血さを作った社会に幼い頃から翻弄させられた作者の怒りが一番、強烈に感じられる2021/11/08
スカラベ
71
怪談の名作として名高い「信号手」を読みたくて購入。ギャッというほどの怖さはないが、正体不明の不安感がずっと後を引く怖い話。「おうい!そこの下の人!」・・冒頭の呼びかけは果たして誰が言わせたのか?その他、これも含め11篇の短編で、それぞれ適度な長さで気軽に読める。ただ、翻訳のせいか文体が少々回りくどく、集中しないと迷子になってしまいそう。「追いつめられて」もエラリークイーン絶賛だけあって、ミステリーとして秀逸。自分としては、「子守り女の話」の殺人鬼大尉ってのが、極端にデフォルメされた怪奇さが漂いツボだった。2015/12/17
ペグ
63
「信号手」はもちろんのこと「子守り女の話」「ジョージ・シルヴァーマンの釈明」などなど 長編では味わえない残酷さとユーモア。ディケンズはやっぱり凄いなんて陳腐な感想しか出てこない。2025/01/10
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