出版社内容情報
『高慢と偏見』『エマ』の人気作家オースティン.二百年前のイギリスの田舎の家族や親戚,近所の噂,誕生と死,洋服や買物,舞踏会―精選された手紙に棘あるユーモアが踊る.上中流階級(アッパー・ミドル)の心性を映す貴重な伝記・社会史資料.
内容説明
『高慢と偏見』や『エマ』で人気の作家オースティン。200年前のイギリス上中流階級を描いた小説の何が読者を魅了するのか。家族や親戚、近所のゴシップ、誕生と死、洋服や買物、昨夜の舞踏会…姉や友人に宛てた手紙の束の、ペン先にきらきら、棘のあるユーモアが踊る。現存する手紙から約半数を精選。社会史・風俗の貴重な資料でもある。
目次
第1部 「綺麗で軽薄な蝶々?」―二十代の手紙
第2部 小説家としてのデビュー―三十代の手紙
第3部 その晩年―四十代の手紙
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
lily
101
健康面と家族についての記述が多い。彼女にとって1番の関心事で家族の価値は極めて大きかった。手紙一通に対しての解説が丁寧で時間軸と背景について理解深まる。恋愛、哲学、古典文学についての記述は苦手だったよう。外見の評価は厳しいな。情緒たっぷり含んだユーモアで溢れている。2021/02/21
えすてい
11
1804年9月14日金曜日、ライム・リージスから姉キャサンドラに宛てた手紙がある。そこには自分の所有物の小物か借家にある家具かの蓋の修理を「アンニング(大工の名)に見積もってもらったら5シリング」とある。この「アンニング」はあのメアリー・アニングの父親であるとされているが、この本ではそのような注は一切ない。オースティンのライムでの手紙は本書ではこの一篇のみ。ライムでは借家住まいであり、家主や使用人のことがいろいろ書かれている。当時の英国アッパーミドルも持ち家ではなく借家住まいも少なくなかったのだろう。2019/08/21
きりぱい
8
よくもここまで暮らしのあれこれを書けたものだなあと感心すると同時に、女性特有の心情も表れていて、同性としての親近感が湧いたりもする。正直、手紙だけで追って読むのは、交わし合いやストーリーがあるわけではないので、ちょっとしんどい時もあったけれど、合間にある丁寧な解説が助けとなって、手紙の背景を思いながらおもしろく読むことができる。出版のあれこれが綴られている部分は特に興味深い。最後にやっと登場するキャサンドラ(姉)の手紙にぐっとくる。2009/04/16
壱萬参仟縁
6
20代、30代、40代の手紙から3部構成。評者も自分史には手紙から引用した箇所もあった。個人史には重要資料。改めて書簡というものは、遠隔の相手に対して心中察し、想像力を駆使して思いやりの精神で書いているのか、とその価値の大きさに感服させられる。「人格―稀に見るよい性格、節操、公正な考え、よい生活習慣―こういったこと すべて を あなた は評価できるでしょう」(空欄がある単語に傍点401ページ)。全部 がいちばん大事、と。然り。巻末書簡一覧では、誰に宛てた手紙かがわかる。姉宛が多いかナ。甥や姪宛てもあった。2013/01/28
ミチ
4
オースティンを知る上で貴重な資料です。身内ネタがほとんどなので読んでいて?となる感じですが、所々解説があるので、まあなんとか読めます。オースティンが晩年病気になってから亡くなる数ヶ月前の手紙もあって興味深く読みました。身体が病気で辛いだろうときもユーモアを失わない自身のセンスみたいなものが感じられて、オースティン自身を知る手掛かりとしてはとても有効かと。これを読んでからまたオースティン作品を再読したら、また違った視点で読めそうです。2023/04/09