出版社内容情報
ワーズワスと共にイギリス・ロマン主義を代表する詩人コウルリッジ(1772-1834).「クーブラ・カーン」「古老の舟乗り」など代表作30篇を〈人生詩編〉〈政治詩編〉〈恋愛詩編〉〈田園詩編〉〈幻想詩編〉の5つの柱のもとに配列した.
内容説明
ワーズワスと共にイギリス・ロマン主義を代表する詩人コウルリッジ(1772‐1834)は、「クーブラ・カーン」「古老の舟乗り」などの幻想詩で名高い。その代表作を、“人生詩編”“政治詩編”“恋愛詩編”“田園詩編”“幻想詩編”の5つの柱のもとに30篇選出し、幻想詩にとどまらないコウルリッジの詩の魅力を存分に味わえる1冊とした。
目次
1 人生詩編(人生;ソネット―オッター川に寄せて ほか)
2 政治詩編(バスチーユの崩壊;アメリカにパンティソクラシーを建設する見通しについて ほか)
3 恋愛詩編(リューティ―あるいは、チェルケス地方の恋唄;恋 ほか)
4 田園詩編(詩章―ブロックリー谷の左斜面を登る;アイオロスの竪琴 ほか)
5 幻想詩編(クーブラ・カーンあるいは夢で見た幻想―断章;古老の舟乗り ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
syaori
64
幻想詩で有名な英国の詩人コウルリッジの詩集。本書では人生詩、政治詩とカテゴリーに分けて紹介してくれていて、幻想詩だけでない彼の一面や人生が垣間見えるよう。しかしやはり圧巻は幻想詩で、人生詩や田園詩などで垣間見えていた、生の悦びや霊感をもたらす美を造りだす自然への憧れや畏怖、それを超越した神秘的なものへの志向が詩行の中に結晶しているようで、そのヴィジョン、そのリズム、そして「明日はもっと美しい歌をうたおう。しかしその明日はまだ来ない」という作者の言葉のように永遠に高みを見つめるような美に陶然となりました。2021/11/16
内島菫
37
ボルヘスの文章に何度も名が挙がっていた詩人。やはり幻想詩が最も興味をそそるが、いずれも夢のようにあるいは未完のまま終わっているところが、その主題を引き立てているよう。「しかし心の中にまだ残っている記憶から、当初自分にいわば与えられたとも言える内容を、自力で完成しようと著者はしばしば企ててきた。「明日はもっと美しい歌をうたおう」。しかしその明日はまだ来ない。」(「クーブラ・カーン」より)という言葉が、著者の作品や人生を良く表しているように思われる。ボルヘスはその宝石の破片をそれに見合うように拾いあげた。2017/10/11
HANA
36
コールリッジの諸作は名前だけは知っていたものの、最近ロマン主義の本を読み興味が湧き購入。というわけで目的は「クーブラ・カーン」「老水夫行」「クリスタベル」の三篇だったわけだが、本書では「クリスタベル」が一部だけの訳となっており、その点は不満。後「老水夫行」も「古老の船乗り」と直訳みたいな題にされていて、そこも少し不満。ただ自然、人生といったように分野ごとに詩が紹介されており、コールリッジの全体像が把握できるようにはなっている。しかしやはり少々頁が増えても「クリスタベル」は全訳して欲しかったなあ。2013/03/03
加納恭史
16
自然に親しむとたまにワーズワースの詩集でも読むかと思ったがなかったので共作品もあるコウルリッジ(1772~1834)の詩集を読む。ワーズワース同様にイギリスのロマン主義の開祖になる。ドイツのロマン主義とまた違うのかな。当時フランス革命はショックだった。彼の略伝も巻末に詳しくある。彼は十三人兄弟の末っ子だった。父親はイングランドの教区牧師で、末っ子の彼は溺愛されるが、それをひがんで上の子たちは彼につらく当たる。父親は早くに死にクライスツ・ホスピタルに入る。まあ孤児の学校で彼はいさかいが嫌で読書に夢中になる。2024/09/03
ぶらり
11
可憐に洗練された文体、これがロマン主義かと改めて納得。ワーズワースも覗いてみるか。理解には程遠いが、まさか詩人の世界に辿りつくとは…感動。併読のボルヘス「創造者」は意味不明、ボルヘスの迷宮は果てしない。しかし、まだまだインドにもスペインにも優れた詩歌が、短編が、長編があり、私のしわがれた声に潤いを与え、落ち窪んだ眼に英気を蘇らせ、淀んだ心に静かな躍動をもたらしてくれるだろう。思慮浅薄で読む本を探しあぐねていた一年前、漱石辺りから変化して相当の進歩か。作家や作品の「周辺を読む」、ひとまず私の読書法としよう。2011/01/24