出版社内容情報
イギリス・ロマン主義を代表するワーズワス(1770-1850)は,自然詩人として明治期から広く親しまれてきた.「茨」「ティンターン修道院」などの短詩や自伝的な長篇叙事詩『序曲』の抜粋を対訳で収め詳注を付す.
内容説明
イギリス・ロマン主義を代表するワーズワス(1770‐1850)は、自然観照の詩人として明治期から広く親しまれてきた。英詩の歴史に画期をなす『抒情歌謡集』所収の「茨」「ティンターン修道院」をはじめ、自伝的な長篇叙事詩『序曲』の抜粋を対訳でおさめ、詳注を付す。英詩を原文で楽しもうとする人々のために編まれた1冊。
目次
茨
眼は狂おしく燃え
ティンターン修道院上流数マイルの地で―1798年7月13日、ワイ河畔再訪に際し創作
ルーシー詩篇
決意と自立
ウェストミンスター橋で―1802年9月3日創作
幼少時の回想から受ける霊魂不滅の啓示
ひとり麦刈りに勤しむ乙女
『序曲』(1805年版)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
lily
101
岩波文庫の詩集(対訳)から歴史と人物と言葉と心と美を知る。これほど合理的で心地よい教材はあるだろうか。200年前のイギリスの田園風景が広がる町にタイムスリップしたような優雅なひと時だった。2020/11/13
壱萬参仟縁
21
[3]ティンターン修道院上流数マイルの地で、の、目には見えない力があり、高められた思いが喜びとなって私の心をかき乱した(61頁)とある。目には見えない力、現代は、D.Throsbyの目に見えない文化資本を想起させられた。目に見えないものを可視化するのも大事だが、それを想像してみるのも詩を読むときの楽しみかもしれない。脚注では、ワーズワスは知覚を能動的創造との均衡の上に成り立つとした(66頁)。また、[アルプス]では、想像力を靄のように立ち現れる想像力と考えているようだ(155頁)。思わず、ラスキンの2020/09/11
加納恭史
18
コウルリッジ詩集よりワーズワス詩集の方が分かりやすいので書店で聞いてみるとあった。自分で探せない時は聞いた方が早いな。小さい感動からまとめよう。イギリス・ロマン主義の代表するワーズワス(1770~1850)は自然観照の詩人として明治期から広く親しまれてきた。彼はイングランド北西部の湖水地方の一角に生まれた。現代でもこの湖沼地帯は観光名所になっている。最初に登場するのは「茨」。ピンと立ってる古木の茨。葉はなく刺もない。苔いっぱいの岩みたい。苔と苔が絡まってまるで織るのは麗しい女の手、みる目も愛らしい花の房。2024/09/04
coco.
17
イギリス・ロマン派詩人であるワーズワースの日英対訳集。湖水地方を故郷に持つ彼の感性はセンス・オブ・ワンダー。「わたしは心の奥底で自然の力を感ずる」と詩片に綴るように自然賛美が多く、輝きに満ち溢れ、堕ちる詩は少ない。作品から風景画家ターナーの絵画が脳裏を掠めた。遠地まで離れる友人へ贈った詩も好きだが、読む動機となったのは2012年ロンドンオリンピックの開会式&閉会式に使用された『ウェストミンスター橋にて』。文面通りロンドンの街並みに対応させた映像、白熱する昂揚感は200年前の詩だと信じられず衝撃が走った。2013/10/10
風に吹かれて
16
幼年の頃に自然を体に吸い込むようにして経験し、その後の容易でない人生であっても、自然を創っている目に見えないものへの信仰が生を歩ませる。読んでいると励まされるようだ。詩という言葉で自然と生の関わりを表現することは、ワーズワスにとっても生きることへの励ましを自分に与えることだったのに違いない。 「ティンターン修道院上流数マイルの地で」や「幼年時の回想から受ける霊魂不滅の啓示」が自然主義的哲学詩とでも呼びたいような、今後も再読したい詩である。 2021/09/28