出版社内容情報
世間の波風の及ばない桃源郷のような〈幸いの谷〉で過ごす王子ラセラスは倦怠感を覚え,外の世界に憧れる.王子は妹ネカヤアらとともに谷を脱出し,広い世間に出てさまざまな人びとに出会い,真の幸福を探すのだが…….ボズウェルによる伝記でその名を知られる18世紀英国の
内容説明
世間の波風の及ばない桃源郷のような“幸いの谷”に暮らす王子ラセラスは、倦怠感を覚え、外の世界に憧れる。王子は妹ネカヤアらとともに谷を脱出し、広い世間に出て様々な人びとに出会い、真の幸福を探すのだが…。ボズウェルによる伝記でその名を知られる18世紀英国の傑物ジョンソン博士(1709‐1784)が書いた唯一の小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
113
原題は「ラセラスの物語」。「幸福の探求」は内容に合わせた訳題だろう。富に溢れ、平和なアビシニアに住む王子ラセラスは退屈で仕方なく、本当の幸せについて考え、色々な人から話を聞き、ついにはその探求に妹と国を出る。彼らは様々な困難に出会い…、行き着く先は、悟りかもしくはむなしさか。サミュエルソンは18世紀の英国人。ボズウェルが書いた伝記で有名になった人である。さて、これが書かれたのは「カンディード」と同時期で似たような哲学の内容。当時、物議はあったらしいが、私はカンディードの方が圧倒的に好きだ。2016/12/13
KAZOO
32
サミュエル・ジョンソンの小説とはいうものの、小説という形態を借りた教訓のような気がしました。ジョンソン博士唯一の小説とはいうものの、内容も題名の割には少しという感じでしかも訳も古いので、光文社の古典新訳文庫ででも出されたら少しは読者がつくのかもしれません。2014/12/24
ソングライン
18
周囲の危険から隔離され何不自由なく暮らすアビシニア王国の王子ラセラスは、人間の幸福とは何かを見つけるため、妹ネカヤアと知識豊富な詩人イムラックと共に外の世界に旅立ちます。そこでは、仲良く暮らす親子、夫婦にもやがて、わだかまり、憎しみが生まれ、必ずしも幸せな一生を送れるのではないことに気づきます。ならば、どのような生き方が幸福をもたらすのか、世俗から離れて暮らす賢人、真理の探究に一生を捧げる学者に会い、教えを乞うていきます。結論の出ない幸福論が語られますが難しいことは無く、頷いてしまう場面が多い小説でした。2019/02/20
新田新一
10
王子ラセラスは桃源郷の幸いの谷を出て、外の世界で本当の幸福を追求します。名翻訳家の朱牟田夏雄の格調高い訳文を堪能しながら、楽しく読みました。ラセラスがたどり着く結論は平凡なものと言えますが、英国らしい中庸の精神が感じられて納得できました。多分人間は生きている間は、最上の幸福を実現するのは難しいのだと思います。後書きで訳者が作者のジョンソンの人生について触れています。苦労の連続で貧しさが続きました。彼の人生がこの物語には、きっと反映されています。それを考えると、この物語全体が味わい深いです。2023/07/16
きゅー
10
アビシニア国の定めでは、王位につくまでの王子は「幸いの谷」に幽閉され、そこで何不自由なく暮らすという。みな幸せそうに日々を送っているが、それに疑問を持ったのが王子ラセラス。彼は「人生の選択をする」ために外の世界へと飛び出す。人を唸らせる警句を次から次へと口にしたというサミュエル・ジョンソンだが、本書での口ぶりは謹厳実直だ。おそらく本書が金銭的な必要に迫られて書いたという事情によるのだろう。朱牟田夏雄の翻訳はすばらしいし、優れた教訓小説として読める。しかし、予定調和の域を脱するものではないだろう。2018/04/12
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