出版社内容情報
滅亡の市に住む男クリスチァンは神の都への巡礼に出る.落胆の沼を通り,死の影の谷を過ぎ,虚栄の市では投獄されるなど,苦難にあうが,信仰をもちつづけてついに天国の都を望み見る.バニヤン(1628‐1688)のこの物語は17世紀清教徒文学の傑作であるばかりでなく,イギリス最大の宗教文学で,聖書に次いでひろく読まれ,強い影響力をもっている.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
てれまこし
9
第二部ではクリスチァンを信じずに後に残された妻子が改心し巡礼の旅に出かける。恐らくバ二ヤンの説教の聴衆の半分以上は女であったから、女子どもや弱者はも救われるのかという問いを無視できなくなったんではないかと想像される。そこでグレイト‐ハートという勇士がみんなの守り人になって旅に同行する。これは教義上の問題でもある。「選ばれた者」たちだけの民主的だが閉じられた共同体に入る資格の問題。一般に宗教をより必要とする弱い人たちに救いを拒むような教義は妥協を迫られる。信心さえあれば同胞に助けられて救われることになりがち2023/08/07
うえ
4
イギリス近代小説の祖。「何故薬は効験を示す時には下瀉をさせたり、吐気を起させたりするのでせう?言葉」はそれが、それが有効にはたらいたときには、情と思を浄めます。ね、ごらんなさい。一方が身体に行ふことを、一方は霊魂に行っています」「世人は何か恐ろしいことが斯様斯様の場所に起つたといふことを聞くと、その場所が或凶悪な悪魔だとか、悪霊だとかの出て来るところであるといふ説を抱きます。ところが、情けないことには、さういふことがそこで起るといふのは、その人々の行つたことの結果に依るのです」2017/02/26
takeakisky
2
面白いかと問われれば、相変わらずノー。ただ、一部に較べると少し論議に深みはある。とはいえ、独善的なところは変わらず。なんだか全体として、山をただ越えるためだけみたいな読書になった。巨人に対峙してグレイトハート、そんなことは一般論に過ぎない、特殊事項を言へよ、おい。と、たまに滅法面白いこともある。オブザーバー紙のグレイテストノヴェル100。リストの半分読んだが、今のところ、この本だけ疑問符がつく。解説もできる限り好意的に読んだが、この評価をひっくり返すには至らなかった。2023/05/01
maech9
1
(第一部に引き続き)第二部では、“絶望の町”に残った「クリスチャン」の妻、「クリスティアナ」がその4人の子ども、友人「マーシー(=慈愛)」と供に、当初夫に対して持っていた不信を悔い改めた後、彼女もまた神の国への巡礼の旅へ発つ。/旅路のエピソードの感動では第一部に軍配が上がろうが、この第二部においても様々な“神の道”へ至る迄に遭うであろう困難や誘惑について、バニヤン流の秀逸なアナロジーを以て説かれている。/キリスト教の神が救いの手を差し伸べる対象が、自分が考えていたよりも余程広いことに驚いた。2009/08/01