内容説明
『失楽園』で知られる英国の詩人ミルトン(1608‐1674)は、王制から共和制、そして再び王制へとめまぐるしく移り変わる激動の時代に生きた。厳しい現実政治の中で少数派として否の声を上げ、自由のために戦い続けた詩人の魂の叫びとも言うべき『言論・出版の自由』および『自由共和国建設論』の2篇を収録。
目次
言論・出版の自由―アレオパジティカ
自由共和国建設論
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
姉勤
30
「自律」。表題の「自由」を濫用しているものどもに備わっているかは甚だ疑問である。昨今は国家よりも利害対立者による検閲に似た封殺の方が、わが国では目立つ。蒙昧と例えてふさわしい一神教の原理主義と絶対王政より奪い取った、この尊い考えは、責任を持てない、持つ気もないものに野放図に付与するべきものなのか。そろそろ錦糸を纏った下らぬ物言いを聴きわける「義務」も、持つべきではないのか。2016/04/20
藤月はな(灯れ松明の火)
24
「国家は私の統治者であることは構わない。だが、私の批判者であってはならない」は至言。ミルトンは全ての書物へ検閲を行っていた状況を批判した。しかし、現在、信仰する宗教や所属している民族を貶め、嘲笑するような表現が「言論の自由」を盾にして使用されている。一方、事件を連想させるような歌詞やアニメ内容の変更という規制は過剰になりつつある。しかし、辛いからと言って起きている事実を連想するものにも目を塞いでいいのか。また、国家だけでなく、表現も人を貶めるものであってはならないと表現をする上で肝に銘じるなければいけない2015/01/23
ロビン
14
検閲法を批判して書いた表題作と、実質は長老派を武力で追放する独立派の支配議会であったイギリス共和政は個人の尊厳と自由を基盤としていなかったため脆弱で、種々の欠陥を持っていたため、それを是正せんとしてまずは議会に、続いて国民に建言した『自由共和国建設論』を収録。クロムウェルのイギリス共和政はミルトンの理想とした共和政とはかけ離れたものであった。秘書官として政府に奉職しつつもミルトンはやりきれない思いもしたであろう。しかし王政よりもいいものであり人間の持つ自由の権利に沿ったものであるとの信念があったのである。2025/02/28
ラウリスタ~
7
検閲に対する批判と、民主主義の勧め。全出版物が検閲されていたリアルオーウェルな世界でのミルトンの反撃。「失楽園」のミルトンってこういう政治的な面もあったんだ。中国の報道規制を見るにつけ、ミルトンの主張はいつまでたっても読まれるに値することが分かる。民主主義と議会に関するミルトンの考えは重要。現行の民主主義において実質的な主権者は議会の与党になってしまっている、それを見越したミルトンの慧眼。民主主義は決して絶対の政体ではない。2011/07/30
テツ
5
ミルトンの時代にミルトンが見た検閲の問題点とそれについての批判。読まれた方のほとんどが挙げているけれど、『国家が私の統治者であることは構わない、だが、私の批判者であってはならない』は至言だと思う。民主主義の大前提の一つとして他人の思想を侵害してはならないということがあると思うけれど、それが個人対個人ではなく、国家対個人という形で行われることの恐ろしさ。個人の尊厳と自由の尊重は人民が自覚して、それを無くさないように戦うことでしか維持されない。2015/06/14
-
- 和書
- 子どもに寄り添う教師