出版社内容情報
シェイクスピア(一五六四―一六一六)の喜劇精神が最も円熟した一五九○年代の初めに書かれ,古来最も多く脚光を浴びて来た作品の一つ.人肉裁判,筐選び,指輪の挿話等をたて糸とし,恋愛と友情,人情と金銭の価値の対照をよこ糸としているが,全編を巨人の如く一貫するシャイロックの性格像は余りにも有名である.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
saga
42
【再読】奥付1983年45刷。購入のきっかけは中高生の頃に文化会館で見た映画だった(と思う)。有名なシャイロックの裁判での大岡裁きのような落ちだけは記憶にあったが、『オデッサ・ファイル』を読了後に読むと、ユダヤ人に対する迫害がヨーロッパ中にあったことを認めざるを得ない。イギリス人であるシェークスピアが、イタリアを舞台とした戯曲だが、古くからある劇台本をブラッシュアップした作品であることも解説から教えられた。2025/06/26
羽
22
初めてシェイクスピアを読めたという喜びが大きい。大学の英文学の授業ではお手上げ状態だったので(『Macbeth』が難しすぎたのを今でも覚えている)、卒業後もシェイクスピアを敬遠していたが、日本語で読むと単純にストーリーを楽しめた。解説も素晴らしく、シェイクスピアという謎に包まれた人物について、知れば知るほどハマってしまう気持ちが理解できた。次は四大悲劇に挑戦したい。2020/12/23
ピカ
22
シェイクスピアの作品の中でも特に展開が明瞭で読みやすく、面白かった!ポーシアが婿選びで期待しまいとするところがいじましい。それからの行動力には驚かされた。ネリッサとが男装して夫の親友を見事救い出すとこはかっこ良くて感動。その後の指輪をめぐる痴話げんかは、そのまんま今の夫婦に当てはまるな(笑)シャイロックの根性悪さはいっそ清々しく思える。ジェシカとロレンゾの恋人も甘くていい。「ごらん、どんな小さなあの星屑だって、回りながら、天使のように歌っていないのは、一つとしてない」星空の音楽の美しさにうっとり。2014/12/09
nobody
21
純粋に面白い。神話・聖書を随所に鏤め教養付かせ16世紀エリザベス朝でこれは最高の娯楽だったろう。中野好夫も好訳。文学作品としてもこれはどうなるんだろうというワクワク感、本来の姿を思い出させてくれる。それは私が文学一般、殊に今日の文学に大きく失望している所だ。他作品も読んでみたいとまで好感したシェイクスピアだが、オリジナルの創作という訳ではないらしい。それでも虚飾への嫌悪という主題は充分読み取れる。中野には低評だが私にはシャイロックよりも道化ラーンスロットが印象に残った。ジェシカとの別れのシーンなど最高だ。2018/05/08
かふ
20
それほど面白いとは思わなかった。無理強い裁判のシーンは、『一休さん』で結果を知っていたから。ユダヤ人差別の問題があるが、時代的なものだろうと冷静に読んでいた。確かにジュという言葉ばかりで気になるのだが。最後の婚約指輪のシーンが印象的なぐらい。2021/10/03