出版社内容情報
「汝 紅玉を身にまとわば 火勢恐るるにたらず」――盗賊たちの巣である「牧人の地」を逃れた二人は、数々の苦難に遭いつつも、神々に導かれるかのように旅を続ける。死者の蘇り、姦婦の悪巧み、都市の水攻め、暴れ牛との格闘など、語りの妙技によって読者を物語の渦中に引きこむ、古代ギリシアに生まれた古典小説の最高峰。
内容説明
「汝 紅玉を身にまとわば 火勢恐るるにたらず」―神々に導かれるかのように、苦難の旅を続ける若き二人。死者の蘇り、姦婦の悪巧み、都市の水攻め、暴れ牛との格闘など、語りの妙技によって読者を物語の渦中に引きこむ、古代小説の最高峰。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
57
若き恋人たちを襲う貞操の危機と艱難辛苦。特にテュミアスが神職を追われるきっかけになった淫蕩な女、アルサケとその忠実な乳母でもあるキュベレイの卑劣な策を如何に掻い潜るかは見応えたっぷり。そしてカリクレアイアは本当の父母にその正体を明かすが・・・。物的証拠があったとしてもそれを鵜呑みにはしないエティオピア王は統治者としては有能だ。だが、全てを知っている読者としてはその慎重さが歯痒くてならない。更に待ち受ける試練に読者も手に汗握る!勧善懲悪でもあるスペクタル劇は今も古びないのを実感させられた読書体験でした。2025/02/15
ゆう
13
夢中になって読んだ。起きたことを順番に描写するありがちな古典ではなく、話中話や効果的な順番の場面展開、過去の明かし方に心掴まれあっという間に読み終えてしまった。話中話の聞き手と同じ立場になって一緒に驚いたり、もっと教えてくださいと乞うたりと作者と対話しているようだった。人の話し方が婉曲迂遠で、結論から話せば誤解はすぐ解けすぐさま事態は好転しただろうにと思う一方、このようにゆったりと生きることができればとも思う。イーリアスとオデュッセイアが多く引用されていたので次はこれらを読もうと思う。2025/03/10
kibita
12
もうすごいったら。絶世の美男美女の主人公達の艱難辛苦にハラハラ。男性陣の名前がほぼ〜スだし上巻から日が開いているので、何度も誰だっけ…と登場人物欄に戻る。ペルシア軍とエティオピア軍の戦いの描写も秀逸。脳内でドルービーシネマ化される。悪人は悪人らしい最期を迎えるし、すっきり大円団。映像化してほしいけれど、次々とやってくる災難の原因が「二人とも美男美女過ぎるから」なのでちょっと無理か。熱くて回りくどい台詞を講談で聞きたい。とても面白かった。2025/03/20
春ドーナツ
12
諸説あるが4世紀に書かれた古代ギリシアの小説のようです。一難去ってまた一難の展開で、最終章の大団円では、スムースに事が運ぶかなと高を括っていたら、見事に裏切られた。本当に最後の最後まで息の抜けない物語でした。ルネサンスのころに不死鳥のごとく蘇り、世に流通したそうで、本書を題材とした絵画が多く描かれたらしい。書影を飾る絢爛豪華な作品もそのふたつだったのかと解説を読んで気づく。なんかねえ、古代というと紀元前のイメージだったけれど、4世紀も古代なのですね。中世だと思っていた。歴史年表に疎いことが露見する。それで2025/03/15
Ryo0809
4
英雄時代の薫りを底流に漂わせながら、多淫な王妃のもとを逃れ、戦争に巻き込まれて虜囚の憂き目に遭い、犠牲として命を落とそうとする、まさに波乱に富んだ筋立てである。この当時、神への敬虔さや正義、友情、王としての度量の大きさ、肉体的な美、などが美質として社会の軸にあったのだろう。純潔への憧れも含めて、神と生きる人間の理想の姿をストレートに描いた作品と思われる。これだけの作品が失われず、今でも読めることに感銘を受ける。2025/02/22
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- 和書
- 春雷 祥伝社文庫