出版社内容情報
ルキアーノスは古代ギリシアの諷刺詩人.彼は純粋典雅なギリシア語で諷刺対話80篇余を書き,当時の宗教政治社会の愚昧さと悪徳を辛辣にユーモラスに批判した.本書には遊女たちの手練手管を描いて社会の裏をあばく「遊女の対話」ほか3篇を収録.
1 ~ 1件/全1件
- 評価
電子化待ちタイトル本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
SIGERU
36
古典を読む楽しみは、現代にも通じる普遍的な真理を、明晰簡勁な表現で味わえることにある。人の営みが万古不易であることへの気づきも、嬉しい発見だ。表題作『遊女の対話』を読むと、閨房における男と女の事情が、二千年を経てなお渝らないことに一驚を喫する。文体も読みやすい。現代の遊女たちが、LINEでかわす軽倢なやり取りを覗き見るような興味が湧き、ページを繰る手が止まらなくなる。ルーキアーノスは、古代ローマは五賢帝時代の諷刺作家。今に生きていれば、時流を読むのに長けた慧眼俊敏なジャーナリストとして、大活躍しただろう。2022/05/31
刳森伸一
5
ルキアノスの作品を4篇集めた作品集。そのうち2篇が対話篇。『遊女の対話』は遊女やそれに群がる男たちの会話を多数集めたもの。本音と建前のjギャップが愉しい。『嘘好き、または懐疑者』は死後の世界などの不明確な事柄をあたかも真実家のように語る「哲学者」を揶揄した作品で、個人的にはやや退屈。『偽預言者アレクサンドロス』は詐欺師の人生を描いたもので、本書の中で一番面白い。『ペレグリーノスの昇天』は人の目を集めたいばかりに公開自殺を行うペレグリーノスの話。名誉欲もほどほどにということか。 2014/08/08
qoop
4
全体にエンタメ的で驚いた。軽妙なタッチで遊女と客の本気と駆け引きを綴った表題作と、怪異を信じるものと疑う者とのやりとりをまとめた〈嘘好き、または懐疑者〉が良かった。特に後者は当時の幻視体験のモデル(著者の完全な創作なのかな… それともどこかに元ネタが?)が紹介されていて興味を惹かれた。そんな怪異の中で特に印象に残ったのはエウクラテースの体験談。森の中で象より大きな犬を連れた蛇体の女神に出会ったとか、その女神が地割れに飛び込んで姿を消し、その割れ目を除くと地獄に続いていたとか、パンチ効きすぎ。2015/11/24
mahiro
3
遊女達の話は生き生きとして古代の作品とは思えない程だった、恋の悩みや手練手管は今も昔も変わらないと言う事か…吉原の話と比べると、新大陸から恐ろしい病がもたらされる前の遊女達はまだ明るいな、と少しずれた事を思った。 他の作品もキリスト教が広まり出した頃の世間の様子がわかって興味深い。 今のトルコのあたりはギリシャ、ローマの人々が活発に行き来していた賑やかな土地だったのだと想像するのも楽しかった。 しかしルキアーノス氏って随分他人の批判をする人だったのだなぁ…2013/02/26
karatte
3
"ギリシアの諷刺詩人ルーキアーノスの代表作四篇、軽妙な筆致で迷信を嘲笑、えせ哲学を難じ、滑稽な皮肉を交じえて恋の戯れを描く(帯より)" 諷刺というよりは直接攻撃といった態の作品が多かった。物語的な面白みは『神々の対話』諸篇のほうが上か。かなり啓蒙作家的。2011/02/27