出版社内容情報
ヴェーダはバラモン教の根幹をなす聖典であるが,とりわけアタルヴァ・ヴェーダは通俗信仰に密接に関連し,呪法をその本領とした.これらの呪文は,庶民のさまざまな願望――小児の体内の虫の駆除,恋仇への呪い,論敵への勝利,頭髪の生長など――を反映し,そのころの人びとの生活が窺われて興味が尽きない.訳者による周到な解説を付す.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
isao_key
8
四ヴェーダの一つで、いちばん成立が新しいとされるヴェーダで、他のヴェーダが、祭式の主要な構成要素、讃誦・歌詠・供施に必要な内容を載せているのに対し、アタルヴァ・ヴェーダは呪法をその本領とし、起源は古く民間信仰に根ざしていたという。内容を見ると実に細かく日常生活における様々な事項についての呪法が記されている。頭髪の生長を増進させるための呪法、恋仇の女子を詛うための呪法、男子に熱烈な愛情を起こさせるための呪文、男子を不能となすための恐ろしげな呪文もある。また人体の構造を讃うる歌など、変ったものも見られる。2014/11/23
in medio tutissimus ibis.
2
怪我や病を癒したり恋や戦を勝ち取ったりと概ね普遍的な願いを謳ったものが多かったが、ときには異国の古の世界観をありありと感じさせてくれた。鳩が不吉な鳥扱いだったり、論戦の勝利を願ったりとか(これが和合法に分類されているのには訳者も困惑)。所々ある意訳の五七調がテンポよくて好き。一部だけ意訳したのはなぜだろか。2019/09/01
うちこ
2
「呪法」特有のびっくり項目は数知れずという感じですが、「恋仇の女子を詛うための呪文」なんてかわいいものも。人の心についての考察が自然的・社会的・伝統的の多重層であること、そしてそれが宗教儀式と結びついているインド。「リグ・ヴェーダ」や「マヌ法典」と併せて読むと、ヨーガ・スートラやギーターの世界だけでは見えない側面がグッと立体的に見えてきます。「やるせない自然主義」「官能的な道徳主義」「道を外れることも踏まえた伝統主義」、矛盾したこんなフレーズがどれもしっくりいく。 せつなさも爆笑もいっぱいのヴェーダです。2015/05/18
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0
呪殺用