出版社内容情報
五四時代を背景に大家族の崩壊過程を描く.新旧思想の接点に立って苦しむ覚新,要領よく生きようとする覚民,封建制に反抗する覚慧,この兄弟を中心に,多くの従姉妹,美しい下婢鳴鳳等,大家族の腐敗がリアルに描かれている.愛人鳴鳳の死に絶望し,新しい生を求めて出奔する覚慧に,作者の激しい革命への情熱が託されている.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
syaori
21
家長である祖父が死んでも召使の死と同様にすぐに忘れ去られる「空虚な大家族」。礼教と伝統と迷信に囚われた「家」の犠牲となる人たちの苦しみ、そしてその苦しみを生み出す人たちもまた犠牲者だというやるせなさ。一番共感したのは、新しい思想と旧社会との矛盾を認識しながらも家に従い苦しむ覚新でした。恐らく作者の思い、理想は覚慧のうえにあるのでしょうが、彼の行動や思想には若さゆえの傲慢さ苛烈さを感じることが多く、ただそれが彼を家の軛から解放するのも事実で、自分の理想を信じて「反逆者」となれる彼をうらやましくも思いました。2016/08/24
Tomoko.H
7
この封建的家制度は、とっくに腐り切っていたわけだ。外に妾を囲って酒と阿片に溺れるおじさん達もまた、人生を駄目にされたある種被害者なのか。このことがバレて、老太爺に言われるがまま自分を殴る無様な五叔と、勇敢に反抗を見せる兄の覚民とに、人としての大きな隔たりを感じる覚慧。世代か…一方で一応同世代の長兄覚新はやはり基本従順で、その結果またも大切な人を犠牲に。結局誰のことも守れず自分を憐れむばかりの覚新だがやっと心を決め、覚慧を送り出す。家制度の崩壊と、若い世代の心の揺れを見事に描いた傑作だと思う。2022/06/10
大雪(おおゆき)
2
下巻を読み終えた。救われない話が多い中、希望を感じるラスト。この小説は旧封建制下という現実で押しつぶされるどうしようもなさと、そこにふんぞり返る人間の傲慢、そして、それを打破する若者たちという感じのストーリーになっている。しかし、本場の儒教における「序列」とか「儀礼」のすさまじさとか面倒くささって凄いなと思った。生まれた順番とか、メンツにすごく拘るのね。もちろん、それが一つの秩序になってたのは確かだけど。2017/12/18
とんこつ
2
读完了中文版的。《家》是没有胜利者的故事。虽然大家都以自己的方法来对付旧时代带来的传统观念,有的忍耐它、有的通过死来表示反抗、有的从家里逃出去,但是没有人获得胜利。我个人觉得这本小说的一个主题是“环境确定我们的命运还是我们确定自己的命运”,在我看来,大家都在无法推到的传统面前,只能接受它所带来的残酷。反抗自己的命运,改变自己的命运并不是容易的,虽然觉慧最后成功地从家里逃出去,可是这并不是意味着他能改变自己的命运,目前只是改变了自己所在的环境,还不知道这以后会带来什么样的结果。我想看接下来的春和秋。2014/04/03
おとや
2
本作は成都の旧家・高家の若い三人の兄弟・覚新、覚民、覚慧を中心にした物語なのだけれど、その中でも中心となるのは末弟の覚慧だ。ぼくは特に下巻において、この覚慧にほとんど好感が持てず、却って長兄の覚新に共感を覚えた。これは巴金の意図とは真逆なのだろうが、ぼくにとって覚慧は余りに過激で、とりわけエゴイスティック過ぎる。半分自分のせいで死んだ鳴鳳の話題が後半になるとまったく出てこなくなることからも、彼のエゴイスティックな性格が色濃く感じられた。2012/04/24