出版社内容情報
1953年、大江満雄(1906-91)は、全国8つのハンセン病療養所の入所者73名の詩227篇からなる合同詩集を編んだ。詩人たちは、自らの境遇を「宿命」とするのではなく、生命の肯定、人間への愛惜、差別への抗議を、力強くうたった。戦後詩の記念碑、文庫として輝きを放つ。(解説=大江満雄・木村哲也)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
たまきら
32
書評を読んで手に取りました。長きにわたってハンセン病療養所の入所者が紡いだ言葉は衝撃的で、一読の価値があります。彼らの長く実りのない日々と絶望。風景の美しさ、命の感動。国の政策によってアウトサイダーとなった人たちの尊厳と孤独が、証言とはまた違った角度から伝わってきます。素晴らしい内容でした。秀逸。2024/11/26
マカロニ マカロン
14
個人の感想です:B。読書会で紹介された本。1953年詩人の大江満雄さんが全国8つのハンセン病療養所入居者73人の227編の詩をおさめた合同詩集を編んだ。「宿病」などと差別されたことへの抗議、生命の肯定、闘志そして投映された詩が多い。投映された詩が多い。戦前、北條民雄さんの小説『いのちの初夜』や明石海人さんの歌集『白猫』が出版されていたが、詩集は出版されておらず、1953年当時存命の患者の作品を集めた。この時期世界では効果的な新薬が開発されていたが、日本では癩予防法で非人間的な強制収容が続いていた2025/02/20
真琴
10
ハンセン病療養所の入所者73名による詩集。少しずつ読んでいった。力強い言葉から、生きるとは死とはどのようなものなのか、書き手自身へだけでなく、全ての人間へ問いかけているように思えた。読めて良かった。2024/10/25
どら猫さとっち
8
本書は、全国8つのハンセン病診療所の入所者たちの詩を、まとめて編纂したものである。現在では完治する病気だけど、そこに至るまでは、治る見込みがないといわれ、差別や偏見があった。差別への抗議、生きることの絶望と希望、生命の肯定、人間への愛惜…。言葉のひとつひとつに、生命力を感じさせ、闇や光を見出していく。さまざまな感情と人生の真理、言葉は生きる糧となることを、本書は証明する。2025/03/30
チェアー
5
■10/03 いのちの芽 「健常者」を糾弾するつもりはないだろう。しかし「健常者」は糾弾されているのだと受けとらないといけない。彼彼女の絶唱を受け止め、自分の中に沈降させないといけない。詩は説明なしに私達の中に入り込む。「来者」の詩はまさに「来る」のだ。 2024/10/04