出版社内容情報
戦後生まれの代表的な作家となった中上健次(1946-1992)は、郷里・熊野と土地に根差した一族への痛切なこだわりを終生いだき続けた。圧倒的なまでの暴力と性の奔流――中上の憤怒と哀しみは、やがて人間への優しさに昇華されていく。初期の代表作「十九歳の地図」や、「楽土」「ラプラタ綺譚」等、雄勁と繊細の織りなす短篇10篇を精選。
内容説明
闇と光、夢と現、死と生の煌めき。銀のわき立つ河が流れる。中上文学の世界。「十九歳の地図」から「ラプラタ綺譚」まで。
著者等紹介
中上健次[ナカガミケンジ]
戦後生まれで初めての芥川賞作家。1946‐1992(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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本屋のカガヤの本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
69
個人的な話だが、日本の作家で暴力じみた性欲を明け透けに描かれると戸惑いと拒否感が出ていた。しかし、この短編集はそれらの感情が表出する事が少なく、読めた。神話的な短編集。序盤の「隆男と美津子」から衝撃を受けた。罰当たりな事を商売とし、自堕落で語り手もその姿を軽蔑してもいた若い男女。だが、二人の突然の死を知らされ、彼は呆然とするのだ。「彼らと関係が唯一あった自分は冷笑していたが、本当に彼らを理解していたのか?」と。「喪失」とは自身の無理解を知り、当事者に問い掛けてももう返らない事を実感する事なのかもしれない。2023/08/08
かふ
25
芙蓉が咲く時期になると中上健次が読みたくなる。中上健次の印象的な花「夏芙蓉」は、わざわざ「夏」と付けたところに意味があると思ったのは、夏はお盆の季節であり中上健次の献花(仏花)の意味がある。ここに収められている路地という出自は黒人のジャズのように薬物依存で命を失っていく若者の姿であり、路地という失われた土地を求めて中上健次が徘徊する犬の視線(小便で持ってマーキングする)の土地なのでありそこに現れる「かさぶたのマリア」や「オリュウノオバ」は母なる声であったのだ。2024/07/13
ノブヲ
19
冒頭に置かれた「隆男と美津子」は、ただ青臭いだけの安い三文小説かもしれない。しかしこの短篇集(岩波文庫)のはじまりにあえてそう装置してみせることで、あの大家中上健次もかつてはわたしたちと同じ地平に生きるごくありふれた文学青年だったことがまざまざと甦ってくる効果がある。またそのことで「旧套を脱する」ではないが、権威の予定調和を切り崩してもいる。大家・大小説家としての中上健次を知るには、その後の「楽土」や「重力の都」を読めば十分お釣りがくるだろう。2024/04/17
こうすけ
18
中上健次短編集。長谷川和彦監督作『青春の殺人者』の原作となった『蛇淫』。母親のおぞましいほどの、息子への愛が気持ち悪くてよい。ほかに、『十九歳の地図』が言語化しがたい変な魅力。『楽土』は、家族に対するおそろしい暴力の描かれ方にゾッとする。いくつかほかの短編集も読んでみたけど、個人的には『水の女』が別格だったと思う。2023/07/01
mim42
13
初期と後期でスタイルもテーマも異なる短編が味わえる。多くの批評家が書いているのだろうが、中上作品に通奏するのは「路地」「兄やんの自殺」かもしれない。初読の作品も多かったが既読感が強かった。とはいえ金太郎飴ではない。晩年の、句読点を排除した読みにくいスタイルは勘違いなのか文学人としての進化・発達なのか…呼応するかのように、暴力的で性的な描写の比率が増す。初読時に抱けなかった印象としては「総合的に西村賢太のよう」。褒め言葉でも貶し言葉でもない。繰り返しになるが西村に顕著な金太郎飴性は不思議とない。2024/01/15
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