出版社内容情報
塚原渋柿園(1848-1917)は,喪われた江戸を伝える多くの随想,講演を残した文学者.幕末の武士,庶民の生活,風俗習慣,時代の変動,実際の体験に基づく証言は,何より興趣つきない読み物として楽しめる.
内容説明
塚原渋柿園(1848‐1917)は、江戸から明治への転換期を生きた文学者。喪われた江戸を伝える多くの随想・講演を残した。幕末の武士・庶民の生活・習慣、明治初期の論壇・文壇などに関する、体験に基づく語りは、貴重な歴史的証言であり、何より興趣つきない読み物として楽しめる。作品18篇を精選し、詳細な注解・索引を付した。
目次
五十年前
思ひ出る侭の記
幕末における武士の風俗
幕末の江戸風俗(脇差、刀剣の附属品)
幕末の江戸芸者
兵馬倥偬の人
江戸の暮と正月
昔しの日本橋
五十年前には一銭で蕎麦が六杯
江戸語の変遷
江戸時代の手習師匠
江戸時代の文教
維新前後の文学
江戸沿革私記
桜痴先生と柳北先生
尾崎紅葉
斎藤緑雨子
桜痴居士
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
厩戸皇子そっくりおじさん・寺
66
一見、分厚い様で3分の1が註釈なので、案外手頃な1冊。著者・塚原渋柿園は幕府の御家人の倅で、二十歳の時に明治維新を迎えた人。維新後は歴史小説を書いている(何作かはGoogleブックで無料で読める)。岩波文庫はこういう本を出してくれるから嬉しい。青空文庫にまだ無いものをどんどん出して欲しい。江戸っ子で幕末に青春を送った著者が追憶する江戸のリアル幕末(武家の商法のリアル!)や、当時の考証。江戸文化大好きな人にはタイムスリップ必至の1冊だろう。あとこの塚原渋柿園、独特のユーモアの持ち主で好感がもてる文章である。2018/08/31
くすりん
3
タイトル通り幕末の江戸風俗について書かれており、とても面白かった。基本喋り口調なので分かり易かったのもあるかと。また、作者は徳川幕府側の人間として仕えた側で、静岡への無禄移住を余儀なくされたさまなど、維新を別の角度で見れたのが良かった。無禄移住を決意した徳川家来が総勢2500名ほどが、海路静岡まで移動する件が、船内の様子が地獄絵図過ぎてヤバい。そこが一番の読みどころかも。他、正月を如何に迎えたかも、中々趣深く読めました。2023/02/20
tkm66
2
気合を入れて読み始めたが存外早く読める興味深い内容。楽しい。2018/10/31
大臣ぐサン
1
明治の小説家、塚原渋柿園の江戸回顧録。幕末から明治維新のころの文壇の模様が面白い。2020/11/08
nata
1
書名の江戸は地理的な意味での江戸=東京である。当時の暮らし、それ自体を主題にして、しかも後世の推測ではなく実際そこに生きた人が語っている点が興味深い。これを読むと当時にも服装の流行りというものがあったり、著者が今でいう鬱のようになったり、年老いてからは昨今の人心の荒廃を嘆いたりと、本質においては今と同じ「人間」であることを感じる。2020/06/03